“イスラムの同性愛への不寛容さは危険” 銃乱射事件後に現地メディアが抱く警戒心
ISの思想に傾倒するアフガニスタン系米国人の犯行とされる、フロリダ州オーランドのLGBTに人気のナイトクラブで起こった銃乱射事件を受け、銃規制の強化、移民の受け入れ厳格化、性的マイノリティ保護などが議論されている。しかし、これらの議論は的外れで、事件の核心は、イスラム法に基づく考え方にあると主張する人々がいる。
◆イスラム法は、同性愛に否定的
事件を起こしたとされるオマル・マティーン容疑者の父親は、「同性愛者に罰を与えるのは人ではなく、神である」と述べた。ウォール・ストリート・ジャーナル紙(WSJ)は、この言葉がイスラム世界の大部分に深く浸透している、同性愛への否定的な姿勢を映し出していると述べる。
イギリスの人権団体『Observatory for Human Rights』 によれば、今年少なくとも25人がゲイという理由でISに殺されている。6人は石打ちの刑で、3人は頭を打たれ、16人は高層ビルから突き落とされた。ワシントンタイムズ紙のコラムニスト、ケリー・リッデル氏は、このような行為は別にISだけが行なっているのではないとし、死刑も含めた同性愛者への罰は、シャリアと呼ばれるイスラム法の一部だとしている。
◆アメリカに浸透する危険なイデオロギー
WSJ紙に寄稿したハーバード・ケネディ・スクールのフェロー、アヤーン・ヒルシ・アリ氏は、マティーン容疑者のような人物が恐ろしい犯行に及んでしまう理由として、以下の4点を上げている。
1)イスラム教徒の同性愛者嫌いは制度化されたもの。経典を由来とし、何世紀にも渡って発展してきたイスラム法は、同性愛を非難し厳しい罰を与える。
2)イスラム教徒が大多数を占める多くの国々では、同性愛は犯罪でイスラム法に沿った罰が与えられる。
3)よって、多くのイスラム教国では同性愛が嫌われており、西洋諸国に移民しても、その態度は変わらない。
4)現代のイスラム過激思想の高まりは、同性愛への不寛容さを増大させている。過激派は、性的マイノリティを攻撃するのみならず、同性愛は病気で犯罪だと説くことで、偏見を世界的に広めている。
同氏は、今回の事件で責めるべきは銃規制でも移民でもなく、宗教を装って米社会に浸透する深く危険なイデオロギーだとし、同性愛嫌いの形はいろいろだが、現在ではイスラムの形態ほど危険なものはないと主張している。
◆当事者も支援者も気づかない問題点
シティ・ジャーナル誌に寄稿した、イスラムに関する著作を持つ作家のブルース・バウワー氏も、同様の考えだ。オランダでイスラム教徒によるゲイ叩きが起こっていることや、イギリスのイスラム教徒の52%が同性愛禁止を支持していることなどを上げ、多くのイスラム教徒は同性愛者嫌いで、母国を離れた移民であってもこの傾向は変わらないと主張し、多くの左派はこの現実に気づいていないとも述べる。さらに、イスラム教徒が残忍な事件を起こすと必ず、世界には15億人のイスラム教徒がおり、そのほとんどは忍耐強く、平和を愛する人だと聞かされるが、実はその15億人のほとんどが同性愛を軽蔑し、厳しい罰を与えるイスラム教に属していると、皮肉を込めて語る。
同氏は、さらに驚くべきことに、多くの同性愛者が、イスラム教徒も自分達と同じ社会的弱者グループであり、そのため仲間であるという左翼思想に傾いていると指摘。同性愛者はキリスト教徒を敵視しているが、最もアグレッシブなアンチ同性愛のキリスト教徒でさえ人を殺して回ったりはしないと述べ、今回の事件でアメリカの同性愛者がイスラムの彼らに対する憎しみという残忍な現実に気づくことを願う、と述べている。
リッデル氏も同じ点を指摘しており、オーランドの事件を利用し、保守派を責めてゲイの権利拡大を進めようとする人々がいると非難する。同氏は、今回の事件は、イスラム法における基本的信念によって牽引されたヘイトクライムであると断じ、論点のすり替えはやめようと述べている。
最新の情報では、マティーン容疑者自身がゲイであったという報道もあり、同性愛に対するヘイトクライムではない可能性も出ている。真相の解明が待たれるが、一部の人々のイスラム教への疑念を、事件が増幅させてしまったことは確かなようだ。