ケーシック氏がキーマン!? トランプ氏阻止したい共和主流派、賛否両論の禁じ手を出せるか

 米大統領選の共和党候補指名争いで、ドナルド・トランプ氏がリードを広げ、指名に必要な過半数の代議員を獲得する可能性が高まっている。次の15日の予備選・党員集会でトランプ氏が大勝すれば、同氏を嫌う党主流派にとっては致命的だ。米メディアは、15日のトランプ独り勝ち阻止は、ジョン・ケーシック候補の踏ん張りにかかっていると報じている。

◆トランプ指名回避には、票を割ること
 USAトゥデイは、トランプ氏のライバル候補たちが目指すのは、ブローカード・コンベンション(コンテステッド・コンベンションとも言われる)だと述べる。共和党統一候補の指名は、7月の全国党大会で、代議員による投票で決定する。代議員が誰に投票するかは、予備選・党員集会の結果が反映されるので、過半数の代議員を獲得している候補が指名されるのが普通だ。しかし、過半数を獲得した候補がいない場合、第1回の投票後は、代議員たちは支持を変えることが可能で、協議と複数回投票の結果、指名が決定する。つまり、党大会までにトランプ氏が過半数の代議員を獲得できない場合、ブローカード・コンベンションとなり、同氏が最も多くの支持を集めているにもかかわらず、別の候補が選ばれる可能性もある。ウェブメディア『Vice』によれば、途中で撤退した候補、全く予備選に参加しなかった新しい人物も、理論上は指名の対象になり得るとのことだ。

 トランプ氏は、すでに指名に必要な1237人のうち460人の代議員を獲得しているが、テッド・クルーズ氏の370人、マルコ・ルビオ氏の163人、ケーシック氏の63人を合わせた数よりは少ない。共和党のストラテジスト、ケビン・マデン氏は、「最良の選択は、全員が残ること(USAトゥデイ)」と述べており、票が割れれば割れるほど、ブローカード・コンベンションの確立が高まるとしている。

◆明暗分かれるルビオ氏とケーシック氏
 ワシントン・ポスト紙(WP)によると、15日の予備選でルビオ氏とケーシック氏は、勝者が代議員を総取りできるルールがある、それぞれの地元、フロリダ州とオハイオ州に賭けているが、逆に落とせば二人には撤退の道しかなくなるという。同紙は15日も全体としてトランプ氏の優位は揺るがないとしているが、注目はオハイオ州だと述べる。

 NBCなどが行なった13日発表の世論調査では、フロリダ州ではトランプ氏支持43%、ルビオ氏支持22%とかなりの開きがあり、下手をするとルビオ氏はクルーズ氏にも抜かれかねない状態だという。WPは、「強く支持する」と答えるトランプ支持者の割合は73%で、ルビオ支持者の56%を上回るため、フロリダ州はトランプ氏が勝利する可能性が非常に高いと見ている。

 一方、同じ世論調査でオハイオ州を見ると、ケーシック氏支持は39%、トランプ氏支持は33%で、ケーシック氏がややリードしている。「強く支持する」と答えた支持者も、両氏ともに67%と出ており、ケーシック氏がトランプ氏に対し互角、またはそれ以上の戦いを見せることをWPは期待している。

 政治外交ライターであるスーザン・ミリガン氏は、たとえケーシック氏がオハイオ州を制しても、これまでの獲得代議員数の少なさから指名の道は厳しいと述べるが、66人の代議員を総取りできれば、今のトランプ氏の勢いとスピードを削ぎ、同氏の指名阻止へ望みをつなぐだろうとしている(USニュース&ワールドレポート紙)。

◆結果は民主主義を反映すべき
 トランプ氏指名阻止の最後の手として話題になるブローカード・コンベンションだが、前出のマデン氏は、トランプ支持者からの批判は免れないとし、党や対立候補たちは注意が必要だと述べている(USAトゥデイ)。

『Vice』は、ブローカード・コンベンションは、別の候補を指名するために、大多数の党員の投票をひっくり返す行為だと主張し、有権者ではなく、代議員による結果を変える決定は、多くの人にとって民主的には思えないと述べている。

Text by 山川 真智子