社会主義に抵抗なし、サンダース氏の「革命」に魅了される若者たち 次はヒラリー氏に圧勝か
2016年米大統領選の民主党候補者、バーニー・サンダース氏の勢いが止まらない。自らを「民主社会主義者」と呼ぶ同氏の人気は、若者を中心に急上昇。候補者選びの幕開けであるアイオワ州の党員集会では、ヒラリー・クリントン氏が僅差で辛勝したものの、互角の戦いをしており、次のニューハンプシャー州予備選での勝利が期待されている。
◆社会主義的思想で革命的公約を提示
サンダース氏は、74歳。ユダヤ系移民の子で、ニューヨークのブルックリンで育った。バーモント州バーリントン市長、下院議員を経て、2007年から上院議員を務めている。
「民主社会主義者」を標榜し、これまで無所属だったが、大統領選には民主党から出馬を表明。国民皆保険制度、公立大学の授業料無償化のようなスカンジナビア型社会福祉への移行を公約に掲げるだけでなく、大銀行の規模縮小、税を回避しようとする多国籍企業の摘発、より進歩的な税制、二酸化炭素排出削減などを訴え、「政治的革命」を求める人物であるとニューヨーカー誌は述べている。
◆熱烈なミレニアル世代の支持
サンダース氏を支持するのは、ミレニアル世代と呼ばれる1980年代から2000年代初頭に生まれた10代、20代の若者だ。ニューヨーカー誌は、2011年のピュー・リサーチ・センターの調査で、ミレニアル世代の49%が社会主義は好ましいと答えたことを上げ、ソ連や毛沢東の中国を知らない世代にとっては、社会主義は従来とは違う意味を持つと指摘。格差や不平等を認識して育った彼らに、サンダース氏の極めて左翼的な言葉が響くのは驚きではないと述べる。
ニューヨーカー誌はまた、この世代は大量のマーケティング・スローガンや広告のうたい文句にさらされた世代だと指摘し、彼らにとって、サンダース氏にはある種の磨かれぬままの無骨な魅力があると述べる。
ニューヨーク・タイムズ紙(NYT)によれば、全米で220以上の大学キャンパスにはサンダース氏を支援するグループが存在。どれもサンダース陣営が組織したものではなく、学生らが自主的に立ち上げたものだという。ボストンの公共ラジオ局WBURのインタビューに答えたインディアナ州パデュー大学の学生は、誰も知らなかったサンダース氏の人気に火をつけたのは、オンライン上の情報やソーシャルメディアだったとし、ネットが学生の支持をまとめるのに重要な役目を果たしてきたと説明した。
若者たちは、総じてサンダース氏を「誠実そう」だと評する(NYT)。アイオワ州の学生は、クリントン氏が「誰かの言葉で話している」ように感じられるのに対し、サンダース氏は「自分の思っていることを言葉にしている」と述べる。ニューハンプシャー大学の学生は「政治的革命にわくわくする」と述べ、大企業の金で政治家が買われない本当の民主主義に戻ることを期待しているとNYTの取材に答えた。
アイオワ州党員集会では、17歳から29歳の投票だけを見れば、サンダース氏はクリントン氏に70ポイントの差をつけ、圧倒的支持を得ている。2月1日から3日に実施された世論調査では、次の戦場となるニューハンプシャー州の予備選挙で、18歳から29歳の有権者のうち87%がサンダース氏に投票するつもりだと回答している(NYT)。
◆次戦では圧勝かも?
公共ラジオ局WBURのインタビューに答えたフロリダ大学の政治学者、マイケル・マクドナルド氏は、サンダース支持に向かう若者は理想主義者だと述べ、政治とはこうあるべきだという純粋な考えを持つと述べる。
クリントン氏の選挙運動を指揮するロビー・ムック氏は、現実的選択の必要性を主張。候補者が実際何かをやり遂げる能力があるかどうかという点で、若者とすべての有権者の間では違いが出るとし、大統領には停滞を打破することができる誰かを選ぶべきとMSNBCのインタビューで述べた(NYT)。アイオワ州の投票では、45歳以上の支持でクリントン氏はサンダース氏を大きく上回っており、クリントン支持者の中には45歳以上の票だけで、大統領指名は勝ち取れるという見方もある(NYT)。
ところが2月3日から6日に行われたCNN/WMURの世論調査によれば、ニューハンプシャー州の民主党予備選でサンダース氏に投票すると答えた有権者は58%だったが、クリントン氏と答えたのは35%で、まさにバーニー旋風が吹き荒れている。共和党のほうも、トランプ氏の勝利が予測されており、左右極端な候補の躍進が、今年の大統領選の特徴のようだ。