3位ルビオ氏、一気に共和党候補の本命に? 現地メディア大注目の理由とは-アイオワ初戦
2月1日、2016年、米大統領選の候補者指名争いの初戦となる、アイオワ州の党員集会が開かれた。共和党では、過激な発言で人気を集めるドナルド・トランプ氏を抑え、テッド・クルーズ氏が勝利した。注目を浴びたのは、予想を上回る支持を獲得し3位につけたマルコ・ルビオ氏だ。保守本流の候補者のなかで一歩抜け出したと見られており、次のニューハンプシャー州予備選の話題の的になっている。
◆小さな政府を支持。外交的には強硬派
ルビオ氏は44歳。フロリダ州マイアミ出身で、キューバ系移民の両親を持つ、米上院議員だ。党内では、ジェブ・ブッシュ氏、クリス・クリスティ氏、ジョン・ケーシック氏とともに、比較的穏健かつ柔軟と言われる「エスタブリッシュメント」の候補者と見られている。
米公共放送PBSによれば、ルビオ氏は、財政において防衛費以外は歳出削減の立場を取り、法人税率の引き下げにも賛成。不法移民には厳しく、難民受け入れには審査の厳格化を求めている。同性婚と中絶には反対。外交的には強硬派で、イラン、イスラム国に対してタカ派的な姿勢を打ち出している。昨年8月には、尖閣諸島は「同盟国である日本の領土だ」と発言し、当時のオバマ政権の対中融和策を批判した(時事通信)。
◆トランプ氏に猛追。予想外の善戦
アイオワでの得票率は、クルーズ氏28%、トランプ氏24%、ルビオ氏23%。米フォックス・ニュースに寄稿した政治コンサルタントのダグラス・E・シェーン氏は、保守強硬派のクルーズ氏が、保守的なキリスト教福音派の支持を取り付け、前評判の高かったトランプ氏を抑えるのに成功したと述べている。しかし、メディアがより注目したのは、15~16%しか取れないと見られていたルビオ氏が、2位トランプ氏に肉薄する展開となったことだ。
ルビオ氏のキャンペーン・マネージャーは、「先月は20万人の有権者とコンタクトし、この4日間に1万戸のドアを叩いた」と述べており、ロイターは地道な活動が功を奏したと見ている。ワシントン・ポスト紙(WP)は、ルビオ氏の善戦は、彼こそが本選挙を勝ち抜けるもっとも幅広いアピールを持った候補者だというメッセージを送った結果だと指摘。上位二人に猛追したという事実は、アイオワのような社会保守主義の土地で、エスタブリッシュメントの看板を掲げていても、耐久力があることを示したとしている。
◆保守本流をまとめられるか?
CNNは、エスタブリッシュメントにとって、大衆を扇動するポピュリストであるトランプ氏は最初から論外、クルーズ氏はワシントンの共和党幹部から嫌われていると述べる。そうなると残るのはルビオ氏で、次のニューハンプシャー州の予備選で、ルビオ氏は、自分だけが党として推せる可能性のある選択肢だと強力に打ち出すとCNNは予想する。まずルビオ氏の陣営は、この選挙は3人のレースであること、他のエスタブリッシュメント候補では勝てないことを主張し、保守本流をルビオ氏支持で納得させる必要があると述べる。
ルビオ氏自身は、政権奪還のため、自分は共和党を団結させる候補者だとコメント。テレビ番組でも、ニューハンプシャー戦を前に、「共和党側の人々は、この選挙で負けるわけにはいかないと気づいている。私なら、党を団結させるだけでなく、党を成長させる最良のチャンスを与えられる」と訴えている(ロイター)。
◆次に向け、戦略を調整
ニューハンプシャー州の共和党支持者は、より非宗教的で、リベラルだとロイターは指摘し、クルーズ氏は苦戦しそうだと述べる。シェーン氏も、クルーズ氏がアイオワのような成功を収めることは難しいとし、ルビオ氏のほうが有利だと見ている。
一方共和党上院議員のリンゼー・グラハム氏は、「アイオワで勝つために右に寄ったことは、ニューハンプシャーでは強引な売り込みと取られる」と指摘。最近ルビオ氏が移民政策で姿勢を硬化させていること、また中絶反対であることが、不利になるかもしれないとも述べた(ロイター)。
世論調査では、ニューハンプシャーではトランプ氏がリード。ブッシュ氏ら他のエスタブリッシュメント候補もアイオワよりは支持を広げるとみられている。ニューイングランド・カレッジのウェイン・レスペランス氏は、ルビオ氏は調整が必要だろうと指摘し、「保守的なメッセージを強調するが、宗教は控え目にし、税制、国境管理、銃規制などのホットな政治的争点にフォーカスする」と予想している。