日本に「好意的」71%で断トツ1位 アジア太平洋4ヶ国で80%超 一方中国12%、韓国25%
米調査機関ピュー・リサーチ・センターが2日、アジアを中心に実施した新たな世論調査の結果を発表した。「アジア太平洋諸国の国民は、互いの国とその首脳をどのように見ているか」と題したレポートでは、対象国の中で「日本が最も好意的に見られている」ことを中心トピックとして伝えている。
◆2位の中国に差をつけての好感度1位
ピューは「今後数十年間は、アジアの世紀となる見込みがある」と語り、世界におけるアジアの重要性が高まりそうだとの見方を示す。アジア太平洋地域の人々が、互いの国とその首脳をどのように見ているかは、ますます重要問題になっている、と指摘する。
4~5月に実施されたこの世論調査は、アジア太平洋諸国10ヶ国(オーストラリアを含む)とアメリカの1万5313人を対象に実施された。
調査では、日本、中国、インド、韓国の4ヶ国について、好感をもっているかが質問された。結果、日本が断トツのトップとなった。日本を除いたアジア太平洋9ヶ国の中央値では、71%が日本を好意的に見ていると回答した。レポートのサブタイトルは「日本は最も好意的に見られている。どの首脳も過半数の支持を得ていない」というものだった。
9ヶ国中4ヶ国で、日本への好感度が8割を超えた(マレーシア84%、ベトナム82%、フィリピン81%、オーストラリア80%)。
なお、日本に次ぐ2位は中国の57%。以下、インド51%、韓国47%と続いた。
◆中韓との歴史問題は別として、戦争の影響はもうない?
その一方で、予想されるとおり、中国、韓国の日本に対する好感度は非常に低い(中国12%、韓国25%。前年比では微増)。概して、アジア太平洋地域の諸国民は互いを好意的に見ているが、日本と中国、韓国の関係は例外だ、とピューは述べている。
中国人の53%は日本に対して「まったく好感をもっていない」と回答。これは各国中最多だ(ただし前年よりは減少している)。
ピューはこの結果について、「歴史的な根深い対立」の反映だと分析。また「長年に及ぶ歴史問題での反感」、「最近の領有権問題での緊張」が結果に表れている、としている。
ウォール・ストリート・ジャーナル紙(WSJ)は、戦争の記憶が結果に影響を与えているとの見方のようだ。日本に対する見方は、いくつかの国では世代間のギャップが大きく、大戦の記憶がいまだに重くのしかかっている高齢層では、より否定的な見方だった、と伝えている。その例として中国の高齢層(50歳以上)を挙げている。
ピューによれば、日本を好意的に見るかについて、19~29歳と50歳以上とでは、韓国で34ポイント、中国で11ポイントの開きがあったという。本データによれば、韓国でも若者層では、日本はそれほど嫌われていないのかもしれない。
香港のサウス・チャイナ・モーニング・ポスト紙(SCMP)は、むしろ、(アジア全体として見れば)戦争の影響はすっかりなくなっているとの見方のようだ。そのことを同紙は「戦争? いつの戦争のこと?」と記事タイトルの中で印象的に語っている。
第2次世界大戦終結から70年が経ち、日本はアジア太平洋地域の諸国民から、中国、インド、韓国よりも好意的に見られている、とSCMPは伝える。そして日本への好感度が71%だったのとは対照的に、中国への好感度はわずか57%だったと伝えている。
◆中国をもっとも好意的に見ているのはどこの国? またその反対は?
中国に関しては、ピューは、調査対象のアジア太平洋地域の過半数が好意的な見方だ、と伝える。
国別では、パキスタン82%と、マレーシア78%が突出している。マレーシアは日本に対する好感度も高く、親日と同時に親中でもあるようだ。
反対に、日本とベトナムの中国に対する好感度は、著しく低い(日本9%、ベトナム19%)。ピューはこれについて、領有権問題への懸念が一因だろうと指摘している。ピューが7月に発表した他の調査で、日本とベトナム、そしてフィリピンは、中国との領有権問題を懸念事項として挙げている(日本83%、ベトナム83%、フィリピン91%)。
しかし、フィリピンの中国に対する好感度は、54%とそれほど低くない。ピューによれば、昨年と比べて16ポイント改善したのだという。フィリピンの対中国の冷え込みは緩和されつつあるようだ。
なお、WSJは見出しで「海洋問題がアジアにおける中国の人気を圧迫している」として、この点を中心的に報じた。
◆韓国と中国はお互いの好感度に差。そこに注目した韓国メディア
韓国は好感度で対象4ヶ国中最下位となったが、これに関してピューは、調査対象者のかなりの割合が「わからない」と回答、または無回答だったことも一因だとしている。パキスタンではこれが65%、インドでは52%に上った。聯合ニュースもこの点に触れている。この2国は、日本についても、それぞれ37%、38%が回答保留だ。地理的にも遠く、なじみが薄いのだろう。
また、韓国から中国への好感度は61%だったが、中国から韓国への好感度は47%だった。聯合ニュースは「韓中の相手国に対する好感度に差」と題して、これを中心に報じた。
◆安倍首相、習主席に対する各国の信頼は?
今回のピューの調査は、4ヶ国への好感度だけでなく、日本の安倍首相、中国の習主席、インドのモディ首相への信頼感も質問対象としている。各首脳が国際問題に関して、正しい行動をすると信頼しているかどうかを尋ねたものだ。
サブタイトルにもなっているとおり、全体としては各首脳への信頼は半数に届いていない。しかしピューは、全体の中央値では、国ごとに大きく異なる実情が覆い隠されてしまう、としている。国への好感度以上に、首脳への信頼はばらつきが大きいようだ。ピューは、(国によっては)各首脳に対するなじみがないのもその一因だとしている。
習主席への各国の信頼は、中央値で47%、不信頼は29%だった。安倍首相への信頼は43%で、不信頼は19%だった。
習主席への信頼は、マレーシアと韓国で高かった(72%、67%)。中でも韓国の50歳以上では、実に81%もが信頼しているという。
反対に、日本では、習主席に対する信頼はわずかに12%。不信頼は82%に及んだ。
安倍首相に対する信頼は、マレーシア、ベトナム、フィリピンで高い(73%、68%、68%)。マレーシアはやはり、親習主席であると同時に親安倍首相でもあるようだ。
反対に、韓国では7%、中国では18%が信頼と低調だった。韓国の63%は安倍首相をまったく信頼していないと回答している。これは各国中最多である。