中国の人権派弁護士一斉摘発、国際的に批判高まる 通話アプリにも攻撃か?
中国で人権派弁護士らが相次いで拘束された。欧米メディアは中国政府のやり方を批判。これに対し、中国国営メディアは反論を展開している。一方、時期を同じくして、弁護士らが使用していたメッセージアプリ「Telegram(テレグラム)」に対してサイバー攻撃が行われ、中国政府の関与が疑われている。
◆西側メディアは大きな扱い
最初に拘束されたのは、政治的に敏感な事件を扱うことで知られる、北京の鋒鋭弁護士事務所の王宇弁護士だった。香港を拠点とし、中国の人権派弁護士と法的権利を守る人々を擁護する団体CHRLCGによれば、14日朝までに少なくとも146人の弁護士と活動家が拘束されたり、事情聴取のために呼び出しを受けたという。(英ガーディアン紙)。
西側メディアは今回の事件を大きく、かつ批判的に取り上げている。ロサンゼルス・タイムズ紙は、今回の大規模人権派弁護士の取り締まりが、国際的な非難を浴びていると報道。7月に制定された「国家安全法」が、人権問題に悪用されることを懸念しているという米国務省報道官のコメントを掲載している。ガーディアン紙も、米国務省、北京のイギリス大使館などが突然の取り締まりに懸念を示していると伝え、9月に予定されている習近平主席の訪米中止を求める、米国市民団体の嘆願活動についても報じている。
◆弁護士こそ問題だと、中国は批判を一蹴
欧米メディアの批判を受け、中国国営メディア新華社は、拘束された弁護士や活動家たちこそが、法を破り社会秩序を乱す容疑者だと反論。市民が警官に撃たれた事件などを例に挙げ、名声や金を欲しがる弁護士らが、悲劇的な事件を騒ぎにしたり政治的問題にしていると述べる。「人権の守護者」と西側メディアは擁護するが、拘束された弁護士たちは、私利的で自己宣伝をしているだけだ、と新華社は批判を一蹴。西側メディアは「弁護士」は「正義」で、「中国警察」は「抑圧」だと、適切な根拠もなく同等視していると不満を述べている。
しかし、アムネスティ・インターナショナルは、今回標的になった人々は言論の自由、人権、権力の乱用の問題を扱い、政府に「人権派弁護士への攻撃を止める」ことを求めていたと指摘している(ドイチェ・ヴェレ)。CHRLCGは、ドイチェ・ヴェレのインタビューに答え、今回の取り締まりは、リスペクトされていた鋒鋭弁護士事務所を狙うことで、他への脅しとする意図があったと説明。国際社会からのプレッシャーに対しても、このような中国のやり方は変わらないだろうと述べた。
◆防御から攻撃に変わる中国の対ネット戦略
さて、ウェブ誌「Quartz」は、人権派弁護士の拘束と時期を同じくし、高セキュリティー・メッセンジャー・アプリ「Telegram」へのDDoS攻撃(一斉にひとつのサイトを攻撃し、標的となるサーバーのサービスを不能にすること)があったと述べている。Telegram側は、攻撃は東アジアから始まったと発表。東南アジア、豪州などのユーザーに影響が出て、同社のウェブサイトは、10日から12日の間に中国国内でアクセス不能となり、Telegramのサービスも10日から使用できなくなったという(Quartz)
IT系のウェブ誌「TechChurch」によれば、拘束された弁護士たちは、安全性の高いTelegramを使用して抗議活動の計画や仕事の連絡を行っていたらしい。DDoS攻撃が中国の仕業との確証はないが、Telegramの創業者、パヴェル・デュロフ氏は「アジアで力のあるだれかが、ご不満なのは確かだ」と述べている。
TechChurchは中国のインターネット検閲への対応の変化を指摘。これまでは反応性のアクションにフォーカスし、防御に力を入れていたが、近ごろは攻撃的な戦法で、サービスやウェブサイトを排除することも、心地よいと感じているようだと述べている。