一時的ではない?中国経済の失速 予想外の輸出大幅減に海外エコノミスト驚き
中国の4月の輸出が大方の予想に反して減少した。3月の大幅減に引き続き前年同期比6.4%減となり、中国経済の低迷が一時的なものではないとする見方が強まっている。
◆要因は日本などの需要減と人民元高
8日に明らかになった中国税関総局の統計によれば、輸出はドル建てで前年同期比6.4%減となった。ウォール・ストリート・ジャーナル紙(WSJ)がまとめた13人のエコノミストによる予想(2.5%増)よりも遥かに悪く、比較的控え目だったブルームバーグの予想(0.9%増)と比べてもかなり悪かった。
第一の要因は、世界的な需要の低迷と見られている。ブルームバーグは、景気回復を果たしたアメリカの需要は伸びているが、欧州経済の不振もさることながら、日本向けの輸出の減少が大きく響いたと分析している。同メディアによれば、1-4月の対米輸出は前年同期比で9.2%増(人民元建て)だったが、日本向けは12%減少。EU向けは0.7%減った。
これに人民元高が拍車をかけている。シンガポールのDBS銀行によれば、人民元と香港ドルは、ドル、円、ユーロを含む主要通貨に対して、昨年半ばに比べて13%価値を上げた。これは、他のアジア10ヶ国の通貨の平均よりも7.7%高いという。人民元高について、上海のある医薬品貿易会社の重役は、原材料コストの上昇が打撃になっていると嘆く。「顧客の一部は中国の物価上昇を見てインドに移っている」「将来は楽観できない。競争が非常に厳しく、ここ中国では全てのものが高くなってきている」という(WSJ)。
◆輸出低迷は一時的なものではない
中国の輸出は、3月にはさらに悪い15%減という数字が出ていたが、政府当局はそれを季節要因などの一時的なものだとしていた。しかし、4月も引き続きマイナスになったことで、多くのエコノミストはそれを否定し始めている。
中国・招商証券のアナリスト、シエ・ヤシュアン氏は、「4月の輸出が予想外に減少したことは、3月の大幅減が季節要因によるものではなく、人民元の上昇や当局による昨年下半期以降の貿易水増しなどの取り締まりの影響であることを示している」と分析。オランダを拠点とする国際金融機関、INGマーケッツのエコノミスト、ティム・コンドン氏も、「悪い内容だ。第1四半期の低迷は一時的ではなかったようだ。低迷が続いている」と述べている(ロイター)。
コンドン氏は、輸出が低調な現状では、中国政府が目標に掲げる「経済成長7%の達成が難しくなる」とも述べている。WSJによれば、中国当局は、貿易概況についても、昨年の低迷(3.4%増)は一時的なものだったとして、今年は6%増を目標に掲げている。しかし、最近広東省で開かれた国際貿易フェアで、中国商務部副大臣が「今年の海外貿易は複雑で厳しいものになるかもしれない」と、弱気の発言をしたと中国国営新華社通信が伝えている(WSJ)。コンドン氏も今後の貿易予測は下方修正されるだろうとしている。
◆大規模な刺激策を実施か
輸入の低迷も顕著だ。4月の輸入は3月の前年同期比12.7%減からさらに16.2%減に低下。WSJは「これも予想よりも悪かった」としている。輸出減と輸入減の相乗効果により貿易黒字は拡大し、341億ドルとなっている。しかし、輸入の減少は内需の低迷が続いている事を表しており、中国の実体経済は良くない方向に進んでいるという見方が強い。
多くのエコノミストが、中国政府は近々大規模な刺激策を行うと見ている。オーストラリアを本拠とするマッコーリー銀行グループのラリー・フー氏は、数ヶ月内に何らかの大規模な追加利下げと、銀行預金準備率の引き下げがあると予測する(WSJ)。ロイターの記事でも、他の多くのアナリストも同様の予測を掲げる。
キャピタル・セキュリティーズのアナリスト、ワン・ジャンホイ氏は次のように厳しい展望を総括している。「海外の需要が回復しなければ、輸出の減少トレンドは今後も続き、悪化する可能性も否めない。輸入については政府主導のインフラプロジェクトの大半がまだ始まっていない。そのためエネルギーや鉄鋼の需要が非常に低い」(ロイター)。