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米軍、昨年人質交換していた…イスラム国人質事件対応めぐり、矛盾を英紙批判

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米軍、昨年人質交換していた…イスラム国人質事件対応めぐり、矛盾を英紙批判

 イスラム過激派組織「イスラム国(ISIS)」による人質事件で、ヨルダン政府が人質交換に応じる意向を示したと報じられている。同組織は、フリージャーナリストの後藤健二さんとヨルダン人パイロットを拘束しているとしており、解放の条件としてヨルダンの刑務所に収監されている女性テロリストの釈放を要求している。これを受け、欧米メディアを中心に、「人質交換」や「テロリストとの交渉」の是非を論じる報道が広がっている。

◆基本スタンスは「テロ組織の要求には一切応じない」
 現地報道などによれば、ヨルダン政府の報道官が28日夜、拘束されている同国空軍のカサースベ中尉が解放されれば、ISISの要求通りサジダ・リシャウィ死刑囚を釈放する用意があると述べたという。この人質交換に後藤さんが含まれているのかなど、詳細は明らかになっていない。

 これを受け、欧米メディアを中心に人質交換の是非が論じられている。英・ガーディアン紙は「このヨルダンの動きに、西側の政府、政治家、外交官らは眉をひそめるだろう」と記す。一方で、中東では今も昔ながらの部族支配の時代の習慣が続いており、「紛争地域では人質を取ることと人質交換は一般的に行われている」「中世のヨーロッパも同様だった」とも同紙は指摘する。

 しかし、現代のアメリカ、イギリスなどの西側政府の基本的なスタンスは、基本的に「テロリストやテロ組織の要求には一切応じない」というものだ。マクドノー米大統領首席補佐官は25日の米FOXテレビの番組で、「我々はテロリストとの交渉には応じない。身代金も払わない。その金で別の誘拐事件が起き、問題を悪化させるだけだからだ」と述べている。日本については、ガーディアンは、「安倍首相も米英などのスタンスに倣うようだが、国民の意見は割れている。後藤さんは自らシリアに渡った時点で自業自得だとする考えが主流だが、彼を勇気ある男と見る者もいる」としている。

◆兵士と民間人の違いは?
 一方、米キリスト教団体系のオンライン新聞『クリスチャン・サイエンス・モニター』は、「自ら選んだ道の結果として誘拐されたジャーナリスト、ボランティア、冒険家」といった人たちと、「国に命じられて戦地に赴いた軍人」とでは扱いが違ってくるという見解だ。後者の場合は必ずしも「交渉に応じない」という原則通りにはいかないと、同メディアは主張する。

 こうした主張が出る背景には、昨年アメリカがアルカイダ系組織と行った「人質交換」を巡る議論があるようだ。米政府は昨年、アフガニスタンでイスラム原理主義勢力タリバンに拘束された米陸軍のボウ・バーグダル軍曹の解放と引き換えに、米軍施設内のグアンタナモ収容所に収監していたタリバン幹部5人を釈放した。これを引き合いに、今回のヨルダンの対応への批判は矛盾していると、米議員らから批判が出ている(FOX)。

 記者団からこの「ダブルスタンダード」を突かれたホワイトハウスのシュルツ報道官は、タリバンは「武装反乱集団」であり、ISISは「テロリスト集団」だと、相手の違いを強調した。また、昨年の人質交換はアフガン戦争終結の動きの一環だったというのが米政府の見解なようだ。これに対し、米上院軍事委員会のメンバーでもある共和党のハンター上院議員は、「率直に言ってバーグダルの件は失敗だった。政府はタリバンとISISを比べることで、それを必死になって正当化しようとしている」と、ホワイトハウスの「苦しい言い訳」を批判している(FOX)。
 
◆ヨルダンの国内事情も影響
 ヨルダンが人質交換に応じる動きを見せている背景には、人質になっているカサースベ中尉の「身分」も関係しているようだ。王族が治める立憲君主制を取る同国では、軍人の華とされる空軍パイロットの多くは有力な部族の出身者だという。カサースベ中尉もその一人で、親戚筋が一大キャンペーンを行い、アブドゥッラー2世国王に解放を強く嘆願したという(『クリスチャン・サイエンス・モニター』)。

 同メディアは、「カサースベを救った王になるのと、彼を死に追いやった王になるのかは大きな違いだ」と記す。ヨルダンが人質交換に応じようとしているのは、国王が国内の目を意識した結果だという見解だ。

 また、ヨルダンは1994年にイスラエルと和平を結んで以来、中東では数少ない親米路線を取っており、シリアのISIS支配地域への空爆にも参加している。カサースベ中尉も米軍の作戦に参加した際に撃墜され、拘束された。しかし、同国では親米・親イスラエル路線への批判も多い。『クリスチャン・サイエンス・モニター』は、そうした国民の批判をかわす意味でも、ヨルダン政府と国王は何があっても同中尉を救出したがっているとしている。

(Newsphere編集部)

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