原油安の弊害:2040年に石油不足の可能性、国際機関指摘 シェール成長鈍化でOPECに期待も
国際エネルギー機関(IEA)のレポート『WEO2014』によると、世界の石油需要は2040年に1億400万バレル/日になると予測されている。2013年の9000万バレル/日に比べ、15.5%の増加となる。需要を満たすには、2030年代までに9000億ドル(106兆2000億円)の投資が必要だ。IEAは、将来の需要のために、OPECが積極的に投資する必要がある、と指摘している
しかし現在は原油安で開発投資が減少しており、予測されている需要を満たせない可能性がある。
◆シェールオイル・ガスの成長に限界か
原油安は底なし沼のごとく続いている。その影響で、世界の産油地にて開発投資の延期が報告されている。ゴールドマン・サックスは、世界で約400の石油・ガス関連プロジェクト投資が足踏みし、9300億ドル(109兆7400億円)分もの投資がリスクにさらされていると警告する(メキシコのミレニオ紙)。
例えば、ロシアとベネズエラは減収で大きな打撃を受け、英国の北海油田も支出削減で投資の見込みはない。石油輸出国機構(OPEC)の3分の1の採油をしているサウジアラビアは投資を犠牲にして原油安を放置している。ブラジルの深海油田についても、現状では開発が遅れる可能性がある。
一方、多くの専門家が、シェールオイル・ガスは、2020年以降に生産量が減少する、と指摘している。井戸の寿命が短く、その割に開発投資が割高になるためだ。スペインのエル・エコノミスタ経済紙によると、年間100万バレルの生産量を維持するには、毎年2500個の新しい採油井戸が必要となる。2年目には採油量が60-70%減少するからだ。従来の工法による採油の場合は、同じ生産量に対し年間60個の井戸を開発するだけで良い。しかもその開発コストはシェールに比べ遥かに低い(フランスのレッド・ボルタイレ・デジタル情報紙他)。
米国やカナダのシェールオイル・ガスは、2020年代後半には生産増加の限界に近づき、2030年以降はまたOPEC支配の時代になる、というのが多くの専門家の共通した見方だ (スペインのエル・エコノミスタ経済紙)。
◆原油安が経済成長に貢献
現在の原油安は世界の経済発展にプラス作用すると、スペインのバンキンテル銀行レポートでも指摘されている。現状の水準が続けば、世界経済に対して0.7%(2015年)、0.8%(2016年)の成長に貢献するとされる。特に中国、欧州が恩恵を強く受けるという。
◆サウジアラビアの思惑
原油安の要因は、需要減と、シェールオイルなどの供給増だ。OPEC最大の産油国であるサウジアラビアは、今後も減産しないだろう。背景については、イラン・ロシアへの打撃、米シェール業者を潰すため、などと言われる。実際、米シェール開発企業WBHエナージ社は、7日までに経営破綻したと報じられている。今後、シェール関連で多くの中小企業が倒産するおそれもある(スペインのエル・エコノミスタ経済紙)。