原油価格、半年で50%近く下落…海外が指摘する3つの危機とは
原油安が世界経済に与える影響が懸念されている。海外メディアは、要因と今後について報じている。特にロシア、ベネズエラ、英国(北海油田)の危機がとりあげられている。また新たな油田への中国が大規模投資する可能性についてもふれられている。
◆ 1バレル=100ドル割れが続くか
米国指標のWTI原油先物価格は、1バレル=60ドル前後の相場にまで下がっている。昨年6月20日には1バレル=107.26ドルを記録していたため、ほぼ半分に値下がった。
2015年は1バレル=70-80ドルの相場になるというのが大方の予測である。ゴールドマンサックスによると、26人の専門家中24人が85ドルを予想した。しかし、石油輸出国機構(OPEC)加盟国の大半は、1バレル=100ドル以上の相場でないと採算割れは必至で、80ドル以下では減産を余儀なくさせられる(コロンビアのポルタフォリオ紙他)。6月のOPEC総会では生産量について検討が行なわれると見込まれ、それまでは65-70ドルの幅で動くと予測するトレーダーもいる (スペインのボルサ・マニア株情報紙他)。
◆ サウジアラビアは減産なし/ロシア・ベネズエラには打撃
原油安の原因は、世界的な需要減とシェールオイル生産拡大による、供給過剰だ。OPECの生産量は3000万バレル/日を維持している。OPEC最大産出国のサウジアラビアは減産に関心を示さない。同国は、歳入減で過去最高の経常赤字となったが、7410億ドル(約87兆5000億円)の豊富な外貨をもつため、石油政策に変更はないとしている。イランなどの弱体化もねらいといわれる。
一方、ロシアにとっては厳しい。同国の輸出の68%は石油と天然ガスに依存している。国家予算の50%を担う規模だ。原油安で既に900億ドル(約10兆6200億円)の減収に繋がっている。採算維持には1バレル=90ドルの相場が必須条件とされており、同国通貨ルーブルへの不安は今後も続くことになる(スペインのロボット・ペスカドール紙他)。
南米のベネズエラも深刻だ。経済学者マクシム・ロス氏によると、原油価格を1バレル=70ドルで設定していた政府の歳入プランは大きく崩れ、150億ドル(約1兆7700億円)の減収につながっている。外貨準備高も大幅に減少している。インフレ率は70%におよび、デフォルトの可能性さえあるとされる。
◆ 北海油田の危機
英国の北海油田にも悪影響が及ぶ。北海油田は1999-2012年まで斜陽傾向にあったが、2013年には投資が活気づいて勢いを取り戻すかに見えた。しかし、今回の原油価格下落で、再建が難しい見通しになっている。1バレル=80ドル以下で採算割れとなるためだ。石油会社の元経営者で政府のアドバイザーでもあるサー・ウッヅ氏は、北海油田では人員削減がこの先18ヶ月は続く、と述べている(BBC)。
ゴールドマン・サックスは、30%の支出削減が必要だと指摘。来年は世界レベルで9300億ドルのプロジェクトが中止になる可能性がある、とも予測している(スペインのパハロ・ロホ紙)。
◆ 米国のシェールオイルとブラジルの深海油田への期待
2006年から米国は870万バレルの輸入を減らし、シェールオイルがそれを補ってきた。シティーグループによると、2011年に石油と天然ガスの輸入超過は3540億ドル(約41兆7700億円)だったが、シェールオイル増産で2018年にはそれを償却できるとされている。
問題は採算性であった。しかし、エル・カノ協会のエネルギー分析家のエスクリバノ氏は、1バレル=50-70ドルで採算が取れるようになっていると指摘している。この先10年、毎年6%の生産増加が期待できる、と国際エネルギー機構(IEA)は予測している。
また、巨大な埋蔵量が確認されたブラジル深海の石油採掘も期待される。多額の投資が必要だが、中国が短期的に採算を無視した投資を試みる可能性がある(スペインのエクスパンシオン経済紙)。