空港は失業者のホテル? 不況スペイン・ホームレスの“安全な生活”を現地紙報道

 日本の失業率は3.5%で、改善傾向にある。

 一方、スペインの失業率は24%。EUでは、ギリシャと並んで最悪の水準だ。統計にあらわれない長期失業者を加えると、34.2%になる、という試算もある(サンティアゴ・ニーニョ経済学教授、スペインのエル・エコノミスタ紙)。2007年には8.3%だったが、ユーロ危機、観光・建設産業のバブル崩壊で、失業率が加速度に増加した。

 現地紙は、空港で暮らす失業者の生活を報じている。

◆ マドリード空港はビッグホテル
 スペインの空の玄関である、マドリードのアドルフォ・スアレス・バラハス空港では、航空会社75社、毎日約1000便が運行している(1978年に民主化への無血移行を導いたアドルフォ・スアレス元首相が今年亡くなったのを記念して、彼の名前が加えられた)。この空港で最大のターミナルはT4で、47万m2ある。総工費は約62億ユーロ(約8680億円)。日に11万人が利用する。

 この空港で、数十名の失業者が生活している。路上生活は寒く、暴行される危険もある一方、問題さえ起こさなければ、空港ロビーでの生活は安全だ。暖房も入っており、トイレは清潔、15分無料のインターネットも使える。カフェテリアは24時間営業だ。バルのテレビでサッカー観戦もできる。1週間に2回保健衛生班の訪問もある。

◆ それぞれの物語
 スペインのエル・パイス紙は、下記のように報じている。

1.エドゥは10年の刑務所暮らしを終え、2013年5月26日、マドリードからサラゴサまで歩いて行くことを決めた。最初の夜を空港の近くで迎えることになったので、T4ターミナルで一夜を過ごした。それ以来、ここが彼の住居になっている。彼は多くの旅行客と同じ身なりをして、小さなバッグとカートを持ち、1日を過ごす。チェックイン・カウンターの近くを行き来し、フライトを待っているかのようにロビー内を散歩する。

2.アンドゥレは東欧出身だ。カートを使うのに必要なカードの収納箱を引っ掻きで開け、それを1ユーロで乗客に売って生活している。

3.マヌエルは、「T4は宇宙の縮図のようなものだ」と語る。彼は為替レートを熟知している。世界を渡り歩いたような印象を与える人物だ。

4.ホセ・ロレンソは、ここで2年生活している。300ユーロ(4.2万円)の年金をもらっている。日中は地下鉄で市内まで行き、NGOに協力している。演劇も勉強し、教会でのサークル活動にも参加している。マドリード市内で生活することも可能だが、空港での生活を選んでいる。

5.フアンホは56才。失業してから路上生活は21年になり、空港での生活も長いという。新聞紙を敷いた上に寝ている。いつも少し酔っぱらっている。

 フライトに乗り遅れたとか、パスポートを無くしたとか、口実を使って僅かのお恵みを請う者もいる。カフェテリアなどで残った食べ物を頂戴する者もいる。

 ターミナルT1とT2も同じような生活者はいる。T4はビッグホテルで、風変わりな者が多い、と彼等は言っている。乗客も疎らになる深夜には、「空港生活同業者」が集まって会話することもある。

◆ 退屈さとの葛藤
 バルセロナのエル・プラッツ空港でも生活している者がいる。スペインのラ・バングアルディア紙は、「退屈さ」との彼らの闘いを報じている。

 また同紙は、硬く冷たいフロアーの上で毛布を少し敷いたところで、長期間寝続けることはきつく、関節を悪くする、と指摘している。夏になると空港での生活者は減り、冬になるとまた増えるという。

 レストランは彼等に残った食べ物を与えるより、ゴミ箱に捨てることを優先している、とも指摘した。

Text by NewSphere 編集部