タイ政府、なぜLINEメッセージを監視? 軍政が“不敬罪”取り締まり強化…国連機関も憂慮
タイのポーンチャイ・ルジプラパー情報通信技術大臣は記者会見で、タイ国内のLINEで毎日交わされる4000万通以上のメッセージ全てを監視できる、と語った(カオソッド新聞)。LINE側は関与を否定したが、国内外で波紋を呼んでいる。
◆タイ政府がLINEメッセージを監視か
ポーンチャイ大臣は、「中傷的、反王制的、また国家安全を脅かすような内容に焦点を置く」と語ったという。
ブルームバーグは、韓国に拠点を置くNaverの広報担当者Nam JiWoong氏が、「タイ政府による監視は実施されていない」とEメールで返答したと報じている。Nam氏は、LINEにとって「利用者のプライバシー保護が最優先」だとした。森川亮CEOは、データ開示は日本の裁判所命令によってのみ実施される、とした(バンコク・ポスト)。
LINEの公表によると、タイの登録ユーザー数は3000万人以上で、Facebookよりも多いという。バンコク・ポストは、LINEがタイ政府との協力関係を疑われるのは初めてではないと報じている。『TelecomAsia.net』によると、タイのTechnology Crime Suppression Division(TCSD)は2013年8月、日本に特別部隊を派遣し、国家安全保障を名目に、NaverにLINEメッセージへのアクセス権限を求めていたという。
◆タイの戒厳令
タイ王国国軍が5月22日に起こした軍事クーデター以降、タイはいまだ平和と秩序の維持を名目とした戒厳令下にある。軍事政権に抗議する者は、軍事裁判で起訴される場合もある。実権を握るプラユット・チャンオチャ首相(前陸軍司令官)は、軍事政権の維持と反対意見の取り締まりは、国内の長年に渡る政治的混乱に秩序を取り戻すのに必要と主張している(ブルームバーグ)。
プラユット首相は、特にタイ王政に対する批判取り締まりを最優先とする。タイ王政は不敬罪法によって守られており、国王、王妃、王位継承者あるいは摂政に対して誹謗中傷、侮辱、敵意を表す者は最長15年の禁固刑に処される可能性がある。軍事クーデター以降、ソーシャルメディア上への投稿などが不敬罪法で取り締まられ、実質抗告の余地がない軍事裁判にかけられている、とブルームバーグは報じている。
国連人権高等弁務官事務所は8月、タイでの不敬罪法による起訴と厳しい刑罰に、憂慮を示した。