ウクライナ、NATO加盟目指し法案可決 ロシアは猛反発、欧州は慎重姿勢
ウクライナ東部の親ロシア派との内戦で、既に4700人が犠牲になっている。24日の和平協議も難航し、内戦が終わる気配はない。こうした中、同国はNATO加盟へ一歩を踏み出しており、ロシアは猛反発、加盟国の反応は割れている状況だ。
◆ ウクライナ、NATO加盟へ一歩
ウクライナのポロシェンコ大統領は17 日、ポーランド議会で、北大西洋条約機構(NATO)と欧州連合(EU)への加盟を目指す、と宣言した。大統領は、クリミア併合などロシアの脅威を挙げ、特に東部地方での軍事支援の必要を説いた。国家の尊厳と安全を守るために、NATO加盟が必要だというのだ。大統領は、2020年の加盟を目指すとし、準備が整った段階で国民投票を実施するとしている。
これを受け、ウクライナ最高会議(国会)は23日、NATO加盟に道を開く法改正案を、賛成多数で可決した。賛成は約3分の2にあたる303票、反対は9票、東部紛争地方の代表27人は欠席だった。
◆ ロシアの反応
法案可決直後、ロシアのメドベージェフ首相は、「NATOへの加盟申請と同じことだ。ロシアにとって軍事上の強力な敵になったことを意味する」と断じた。欧州安全保障協力機構(OSCE)のロシア代表ケリン氏も、この法案は我々に対する敵対行為だ、と述べた。ラブロフ外相は、非生産的で対立を助長させるだけだと批判し、このような姿勢を取れば問題が解決すると誤った錯覚をしている、とも述べた(スペインのエル・パイス紙)。
さらにアントノフ国防次官は、ウクライナが加盟した場合、「NATOとの関係を完全に断絶し、関係修復は事実上不可能となるだろう」と述べたという(ロシア国営RIAノーボスチ通信)。
◆NATO側の反応
一方、15日付EFE通信によると、NATOのストルテンベルグ事務局長は、ウクライナのヤツェニュク首相に、同国のNATO加盟を支援する旨を伝えたという。背景には、2008年のブカレスト宣言で、NATOはウクライナとグルジアの加盟を支持すると謳っていた事実もある。
米国、ポーランド、バルト3国は、ウクライナの加盟に賛成のようだ。テイラー・駐ウクライナ米国大使は、規定の過程を満たすことなく加盟できると指摘した(RIAノーボスチ)。ポーランド、ハンガリー、チェコは規定の過程を踏まずに加盟した。
対して、ドイツ、フランス、イタリア、ベルギー、オランダは、加盟は時期尚早という姿勢だ。ドイツのシュタインマイヤー外相は、火にさらに薪を加えることには注意すべきだ、と述べた(ドイチェ・ヴェレ)。
NATOのスポークスマンは「ウクライナがNATOに加盟を申請した段階で、他国が申請した時と同様に審査しましょう」とエル・パイス紙の取材記者に答えた。同紙は、この言葉の雰囲気から、ロシアと紛争中の国の加盟にNATOはためらいを感じているような印象だった、と報じている。