海外紙が報じる中国の脅威3選:尖閣近くに軍事拠点、海洋監視ネット構築、米国での反日宣伝

「海洋強国」を目指す中国は、東シナ海の尖閣諸島周辺、南シナ海の南沙(スプラトリー)諸島などで、海洋権益拡大を追い求め、他国を威嚇する動きを強めている。東シナ海に面する浙江省・南麂(なんき)列島に、中国が新たな軍事拠点を整備中であると、今週、共同通信が伝えた。

◆尖閣諸島の「近く」に新たな軍事拠点を建設
 共同通信によると、中国側の狙いは、日米との有事を想定して危機対応能力を高めると同時に、東シナ海上空に設定した防空識別圏の監視を強化することにあるとみられるという。

 南麂列島は、尖閣諸島から約300kmの距離にある。沖縄本島から尖閣諸島までの距離と比べて、約100km近い。共同通信の記事をもとに、このニュースを伝えたブルームバーグは、中国海軍軍事学術研究所の李杰(Li Jie)研究員にインタビューを行っている。同研究員は南麂列島について、「釣魚島(尖閣諸島の中国名)に近いため、戦略的に重要な場所だ」と語っている。

 同研究員によると、中国人民解放軍はすでに南麂列島に駐留しており、レーダーシステムも設置済みだという。また共同通信によると、複数のヘリポートの整備が進められているほか、軍用機滑走路の建設計画もあるとのことだ。

◆海洋監視ネットワークの構築で、海洋支配の強化を狙う
 また中国は2020年までに、衛星やレーダーを用いた海洋監視ネットワークを構築する、と中国政府系の英字紙『チャイナ・デイリー』が19日報じた。災害対応、沿岸経済の発展の保証、海洋権益の保護が目的だという。

 中国国家海洋局はこのネットワークを、中国が海での支配力を強化する上で、根底的なものとなる、と位置づけている。また同局のある高官は、その海域に潜在するエネルギー資源を開発して現実化し、中国の海洋権益を保護するのに根底的だとしている。

 チャイナ・デイリー紙の記事をもとに、このニュースを伝えたロイターは、このネットワークの構築は、アジアの緊張関係を悪化させる可能性のある措置だとしている。

 南シナ海は鉱物と石油・ガス堆積物が豊富だと考えられており、中国は南シナ海のほぼ全域について主権を主張している、とロイターは伝える。この海域では、ブルネイ、マレーシア、フィリピン、ベトナム、台湾も主権を主張している。

 また東シナ海の尖閣諸島も、日本と中国がともに領有権を主張している、とロイターは語る。ロイターは触れていないが、中国が尖閣諸島の領有権を主張するようになったのは、1960年代末に行われた海洋調査で、石油埋蔵の可能性が指摘されてからだと言われている。

 中国の動きからは、海洋のエネルギー資源に関して、中国が非常に貪欲である様がうかがえる。

◆アメリカ主要紙で反日宣伝活動
 海洋のほかに、中国が拡大の動きを強めている分野がもう一つある。それはアメリカでの宣伝活動である。19日付の読売新聞の解説記事によると、近年、アメリカで、中国国営メディアによる発信が勢いを増しているという。

 その一例として記事が挙げているのが、ワシントン・ポスト紙に挟み込まれる「チャイナ・ウオッチ」という広告だ。広告とはいえ、紙面の大きさや紙質はほとんど変わらない。今年4月30日の「チャイナ・ウオッチ」は6ページあり、その1ページ目で「南京事件」が取り上げられていたそうだ。

「チャイナ・ウオッチ」はチャイナ・デイリー紙が作成している。チャイナ・デイリー紙には、安倍政権への批判記事が頻繁に掲載されるという。

 米専門誌「コロンビア・ジャーナリズム・レビュー」によると、中国政府の2009年度の対外広報予算は87億ドル(約1兆円)に上った、と記事は伝えている。

 台湾紙『中国時報』の英語サイト『ウォント・チャイナ・タイムズ』は、この読売新聞の記事を取り上げ、詳しく紹介している。この記事が掲載される前の13日に、中国では「国家哀悼日」として、「南京虐殺」を悼む式典が公式に行われたことを伝えている。そして読売新聞のこの記事は、南京虐殺の犠牲者数の認定など、日中間の歴史の真実性をめぐる争いを反映している、と評する。

Text by NewSphere 編集部