内戦シリアで日本人男性拘束 情報少なく、外務省苦慮 海外メディアも混乱の様子伝える
シリアで、日本人男性が過激派組織『イスラム国』のメンバーに拘束されたという情報を、日本政府が調査中だ。ネット上には、尋問を受ける男性のビデオが投稿され、身元に関する情報もソーシャル・メディアを駆け巡っている。
【YouTubeが発信元】
「ユカワハルナ」と名乗る男性は、YouTubeに投稿されたビデオの中で、血を流して地面に横たわっており、なぜシリアにいて、銃を持っていたのかと英語で尋ねられている。「写真家」、「ジャーナリスト、半分医者」という返答に、拘束者たちは嘘だと非難。彼らの一人は長いナイフを男性の胸の上に構え、そこでビデオはストップしている。
メディア各社は、この男性は、民間の軍事会社PMCのCEO、湯川遥菜氏と見られると報じた。PMCの顧問、木本信男氏は、湯川氏とは7月中旬から連絡が取れなくなった、とロイターに話している。共同通信が、『イスラム国』のライバル武装組織『イスラム戦線』から入手した情報によれば、湯川氏は彼らと行動していたが、7月28日にシリアに入ってから、戦闘をレポートするためいなくなったと言う。
湯川氏は、7月11日には自身がシリアのアレッポでライフルの試し撃ちをしたとする内容をフェイスブックに投稿。イラク国境で撮影したとする数枚の写真も、フェイスブック上で紹介している (ロイター)。
【外務省も手が打てず】
AFPは、今回の件で、外務省が首相官邸と警察庁とともに、特別チームを設置したと報道。しかし、外務省の斎木事務次官は、シリアの内戦が調査を難しくしていると述べたと言う。
シリアでは、シーア派から分派した少数派のアラウィー派であるアサド大統領に対する民主化デモが反政府活動へと広がり、内戦に発展した。そこにやってきたスンニ派の過激派組織ISIS(イラク・シリア・イスラム国)は、シリアや周辺国出身のスンニ派武装グループを吸収し、急速に勢力を拡大。6月にイラク、シリアにまたがる『イスラム国』の樹立を宣言したが、戦闘は続き、治安は悪化する一方だ。
外務省は、できる限り、事件に関する情報を集めようとしているが、現在シリアの日本大使館はヨルダンで業務を行っており、混乱するシリアの状況では、現地スタッフもいなければ、だれかを派遣する計画もないと、関係者は話しているという(AFP)。
【危険を顧みない渡航】
日本政府は、2011年以来、シリアへの渡航延期および避難勧告を出している。しかし、昨年初めにトラック運転手が戦争ツーリストとして入国し、紛争の写真やビデオを撮って話題となったように、報道関係者以外で、危険を冒して渡航する日本人がいるのも事実だ(AFP)。
『Vice News』は、湯川氏の安否は分からないとしながらも、ツイッターで「日本のスパイ、ハルナ・ユカワはISISに捉えられ、神の審判によって処刑された」というツイートが拡散していることを報じている。
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