“福島原発から学べ” 米有識者、原発の安全対策に不備と報告

 米国科学アカデミー(NAS)は24日、アメリカの原子力発電所における危機対応能力についてここ2年間行ってきた調査の報告書を発表した。

【天災・テロへの備えが甘い米原発】
 21人の有識者からなる議論によると、アメリカの原発は、設備の故障など内部要因による事故には対応できる態勢があるが、天災やテロなどの外部要因による事故に対しては十分な備えがない、との結果が出たという。

 この調査研究は、福島第一原発の事故を受け米議会がNASに依頼したものだという。LAタイムズ紙によると、同報告書は「アメリカの原発産業は、起きる可能性が低い最悪のケースにも備え得る設計と規制を行うべき」と述べているという。

 福島第一原発で地震により電源が落ち、津波によりプラント内が氾濫したことを「想定外の驚き」と捉えるべきではない。それが福島の事故から学ぶべき大きな教訓である、と同報告書は論じている。

【コスト – 積算基準は安全重視であるべし】
 ウォール・ストリート・ジャーナル紙によると、「原発産業は、事故時のコストについて新しい積算基準が必要だ」と同報告書は述べている。

 米原子力規制委員会(NRC)は現在、原発施設が膨大な支出をせずに済むようコストパフォーマンスのよい基準をベースとしている。しかし報告書は、そうした体制の見直しが必要と訴える。例えば、福島第一原発と似た構造のペンシルバニア州ピーチボトム原子力発電所において、仮に放射性物質の放出事故が起きた場合の対処として試算されている額は60億ドル(約6000億円)だ。しかし今回の福島の事故による支出は、それを遥かに上回る2000億ドル(約20兆円)にのぼると見込まれている。

 「いかにこうしたコストが膨れ上がるか、福島の事故と比べて考えてみるといい」と、同調査研究のメンバーでもあるケビン・クロウリー氏は述べている。

【人 – 柔軟な対応と強いリーダーシップが必要】
 ニューヨーク・タイムズ紙によると、原発における職員の訓練について同報告書は「緊急時には臨機応変な対応ができるよう備えるべき」と述べているという。

 「問題は教科書通りに起きる訳ではない」と原子力技術専門家のロバート・A・バリ氏は語っている。また、ロス認知工学のエミリー・M・ロス氏も「現時点でも、対応範囲を少し超えた行動をとれる機会を与えるよう試しているが、もっと踏み込んで行う必要がある」と述べている。

 また同報告書は、「適切な資金投入と、能力の高い人材が必要であると同時に、安全性が他の要因に阻害されないよう導ける強いリーダーシップが必要だ」とも指摘している。

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Text by NewSphere 編集部