“蜜月”中韓首脳、共同声明に“反日”盛り込まず 韓国の対米配慮が背景?海外分析

 中国の習近平国家主席が3日、韓国を訪問し、朴槿恵大統領と首脳会談を行った。習主席が韓国を訪問するのは就任以来初となる。両首脳は、6ヶ国協議再開の促進や、自由貿易協定の年内妥結、ウォンと人民元の直接取引市場開設を目指すことなどについて合意に至った。

【親密関係を強調の中国報道】
 中国国営新華社通信によると、習主席は「訪問を通し、中韓両国が戦略的協力関係を強化する意志と、条件と、必要な能力を持っていると感じられた」と語ったという。

 同メディアは、今回の訪韓にあたり習主席が4つの点にポイントを置いたと報じている。それは安全保障問題にまつわる政府間の定期的なコミュニケーションと協力関係、新しいエネルギーや通信、知的産業などの分野で協力し成長を目指す連携強化、韓国での人民元決済システム構築支援、観光促進や人材の活発な交流を狙ったビザの規制緩和、であるという。

 朴大統領は習主席を歓迎し、その人柄についても「習主席は誠実で友好的」と表現した、と同メディアは伝えている。朴大統領は「両国が共通の夢を追うことで、北東アジア地域の平和と安定と繁栄も促進されるだろう」と語ったという。

 また習主席に同行した彭麗媛夫人も「両国の友好関係は古代の昔に戻ったよう。より多くの韓国の方が中国に訪れてくれることを歓迎する」と語った、と同メディアは伝えている。

【北の核開発阻止で協力】
 今回習主席が、「まずは北朝鮮を訪問」という今までの慣習を破り、先に韓国を訪れたことは極めて重大な意味を持つ、と韓国の『コリア・タイムズ』は伝えている。

 この点について朴大統領は「習主席が北朝鮮より先に韓国を公式訪問したことは、北朝鮮の非核化を支持し、地域の平和と安全を守るという明らかなメッセージ」と会談後の記者会見で発言したという。中国の最高指導者が北朝鮮の前に韓国を訪問するのは1992年の中韓国交樹立以来初めてで、韓国外交筋は「北朝鮮にむけて中国が明確に冷たい姿勢を向けた」と見ているとのことである。

 朴大統領が一方で北朝鮮との信頼を築く政策をとっていることについても、中国は「飴と鞭」と高く評価しているようだ、と同紙は伝えている。

【北朝鮮より日本が心配?】
 シンガポールのメディア『チャンネル・ニュースアジア』は、安倍首相が軍拡に向けた憲法解釈見直しを宣言した中、北朝鮮以上に両国共通の懸念となっているのが日本だと伝えている。

 上海国際問題研究員の龚克瑜氏は「中国と韓国は日本に対し、慰安婦や靖国などへの苦い思いを共有している。両国の強い経済連携を政治的影響に変えることができるかもしれない」と同メディアに語っている。

 今回の習主席の訪韓を「アメリカ抜きの安全保障構築というものの提唱」と同メディアは位置づけている。しかし一方で龚克瑜氏は「中韓の結びつきが日米韓関係に与える影響については、百度のロビン・リー総裁やアリババのジャック・マー会長、およびヒュンダイのチョン・モング会長やサムスンのイ・ジェヨン副会長なども注目している」とも指摘している。やはり経済界にとって日本およびアメリカとの関係は無下にできないといったところだろう。

 そうした背景もあってか、従軍慰安婦問題についても、関係資料の共同研究などで協力していくことに合意はしたが、共同声明にその旨は含まれず、付属書のみでの言及となっているという。

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Text by NewSphere 編集部