ゲームはドラッグと同じ? 韓国で法規制審議 中毒者が子供を餓死させた事件など背景に
ビデオゲームを中毒性があるものとしてアルコールやドラッグ等の嗜癖物と同様に規制する「ゲーム嗜癖法」が、6月21日、韓国の立法府で審議開始された。これを受けて、23日には政府官僚、産業界代表、大学教授などによる討論会が開催された。
嗜癖とは、簡単に言うと、「止めよう止めようと思いながらも止めることのできない悪い習慣に耽ってしまうこと」であり、嗜癖に関する問題は近年多様化と複雑化を辿っていることを、医療法人藤元メディカルシステムは伝えている。
【ビデオゲームをめぐる韓国の状況】
『CNET』の伝えるところでは、韓国ではビデオゲームは数百万ドルの産業となり、国民的娯楽だが、4月初めに、ゲーム嗜癖を持つ男性が数日間ゲームカフェから帰宅せず2歳の息子を餓死させるという事件が起こった。この事件でゲームに対して否定的な社会的認知が頂点に達したという。
韓国ではオンラインゲームに対する部分的な規制は2011年11月から行われており、午前0時から6時の間は、16歳未満のユーザーは接続できない(「シャットダウン制」)。
【それぞれの立場からの賛成/反対意見】
23日の討論会では、ドラッグやアルコールと同様の法的規制が、現在のゲームへの熱狂状態の調整に最適であるかという点が注目されたと『CNET』は報じている。
『The Daily Dot』は、規制賛成派、反対派それぞれの意見を引用している。
嗜癖法を提案した議員の補佐官は、法案は「(ゲーム)嗜癖に苦しんでいる人々を救うため」であるという。「オンラインゲームのせいで普通の生活を送ることの出来ない人がいるという事実」を強調し「これらの問題をただ無視することはできない」と述べている。
一方、韓国芸術総合学校の教授は、ゲームは嗜癖の唯一の要素ではないという。「嗜癖は非常に複雑」であり「(嗜癖者を取り巻く)社会的、教育的環境が、ゲームそれ自体よりも更に重要な役割を演ずる」というのがその主張だ。
同記事のコメント欄には、「どんなものでも嗜癖物になり得る」「俺たちにはハンバーガーの規制の方が必要だ」といったアメリカの読者からのコメントが見られる。
また、韓国のゲーム業界は、この法案を「(国内ゲーム産業の)死刑執行令状にサインするようなもの」であると捉えている。
【「表現の自由」への攻撃か?】
『CNET』は、この法案を表現の自由に対する攻撃であると考える人々の声を取り上げている。討論会のタイトルは「ビデオゲーム:嗜癖かアートか?」というものであったが、ゲーム開発者協会の一員は、このタイトル自体が既に問題を含んでいると主張する。「アートであろうがなかろうが、(ゲームには)法的に発行されたメディアとして表現の自由がある。討論のタイトルは、もしビデオゲームがアートの一つの形態であるとみなされれば保護され、さもなくば罰せられるということを示唆している」との言葉が引用されている。
『engadget』は、討論は必ずしも嗜癖法の成立を阻止しないが、政治家が地上の現実よりも恐れとスティグマに反応している可能性を示唆する、と分析している。