河野談話検証報告、韓国メディアは連日反発 英米紙の扱いと対照的
慰安婦募集の強制性を認めた、いわゆる「河野談話」の作成過程についての専門家チームによる検証報告が、20日に発表された。検証報告が、談話の文言は日韓の関係者によって、綿密に調整されていたと結論づけたため、韓国や中国からの反発がより強まることが予想される。
英米主要メディアでは、ニューヨーク・タイムズ紙が21日付けで、この件を報じたくらいだが、他に目立った記事は見られない。一方、韓国メディアは、政府が河野談話の検討結果を公表後、連日、日本批判の記事を掲載している。
【談話の精神を傷つける】
コリア・ヘラルドによれば、韓国側は、河野談話が日本独自の調査と判断に基づくものだとしており、以前から検証報告が談話の精神を傷つけることになれば、歴史的証拠を提供し、積極的にアクションを起こすと何度も述べている。
今回の検証報告を受けて、韓国外交部は、日本は河野談話の見直しはしないとしているものの、検証結果が談話の信頼性を傷つける間違った内容を含んでおり、日本側がこの問題を真摯に解決すべきと主張した。
1992年以来、毎週ソウルにある日本大使館前で抗議活動を行ってきた韓国の市民グループ、『韓国挺身隊問題対策協議会』も、検証報告に反発。「戦時下の女性への暴力の根絶を願う国際社会と正当な歴史への挑発だ」、「論争を日本が振出しに戻した」と非難した。
【中国も不満】
一方、人民日報の英語紙『People’s Daily』 によれば、検証報告発表前に中国外交部報道官は通常の記者会見で、「動かぬ証拠を前に、事実を変える試みは不評を買う」とし、日本にその歴史的侵略への自責の念を示すよう主張した。
中国は南京大虐殺とともに慰安婦に関する資料をユネスコの世界記憶遺産に登録することを目指しており、すでに申請が受理されている。
【慰安婦問題は意外な切り札?】
アジアに詳しいジャーナリストのドナルド・カーク氏は『フォーブス』に寄稿し、慰安婦問題を北東アジアの地域のバランスに絡めて論じている。
カーク氏は日本と北朝鮮が拉致問題で協議を再開したことに注目。戦略的、地政学的な理由で敵対する両国だが、拉致問題によりお互いに引き付けられ、両国のリーダーは多くの事を望ましい方向に転化させる準備ができているとする。そしてそれは、韓国にとってはやっかいなことだとも述べる。
北東アジアにおいては、アメリカ、中国、韓国、北朝鮮、日本がそれぞれに対し問題を抱えているが、日朝の対話が「地域のバランスをひっくり返してしまう」かもしれず、それが韓国に慰安婦問題よりもさらに大きな懸念をもたらすかもしれないからだ。
今なら日本の戦略家が、「我々が北と話し合っている間に、いつも聞かされている反日の苦情をやめてはどう?」と韓国に言えるかもしれない。皮肉にも、日本と北朝鮮は、慰安婦問題を負かすかもしれない共通の利害をシェアしているのだと、カーク氏は述べている。
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