ベトナム反中暴動、なぜ台湾企業の方が被害大? 外国企業への不満か…台湾研究者指摘
ベトナムが排他的経済水域を主張する南シナ海域で、中国が石油採掘装置を設置したことから、ベトナムで抗議運動が激化。中国企業を狙った破壊行為が多発した。ところが中国以外の外国企業も甚大な被害を被っており、社員を帰国させる企業もあり、操業を再開できない事態に陥っている。
【原因は格差】
今回の暴動で、台湾、韓国、日本、マレーシアなどの企業の工場が、放火や破壊行為を受け、けが人も出ている。
ウォール・ストリート・ジャーナル紙は、今回の非中国企業への襲撃は、単なる誤認ではなかった、という台湾の研究者の意見を紹介している。
この研究者は、近年の海外企業の流入が、ベトナムの貧富の差を拡大させており、石油採掘問題がベトナム人の怒りを表すための触媒となったと分析する。「物価は上がり、賃金はそれに追いつかない。抗議は中国の油田採掘装置に向けたものだが、根底にある怒りと恐れは、外国人の搾取に対してだ」と述べる。
ちなみに、多くの工業団地があるベトナム南部のビンズオン省では、150社以上の台湾企業と24社の韓国企業が襲われ、中国企業は11社のみだった(フィナンシャル・タイムズ紙)。
【不安な外国企業】
ベトナム政府が南部と中部の工場地帯に軍と警察を送ったことで、16日遅くには暴動は沈静化したと見られたが、中国人、台湾人を始め多くのビジネスマンが、国外へ逃げ出そうと空港に殺到した。
フィナンシャル・タイムズ紙によれば、ベトナム政府は海外投資家を守ると約束している。しかし、ある工業団地の幹部は、19日以降も不安から営業を再開できない会社が多いとし、「政府は他国の投資家に謝罪し、二度とこのような事態が起きないよう対策を講じるべき」と述べている。
ウォール・ストリート・ジャーナル紙は、今回の暴動で、抗議活動を制御しつつ、いかにして中国へのプレッシャーを維持していくかというベトナムの課題が浮き彫りになったとした。
【強引さが引き起こした事態】
一方、中国政府は自国民を避難させるため、5隻の船をベトナムに送ると18日発表。すでに1隻は出航済みで、19日にはベトナムに到着予定と国営新華社通信が報じている。これまでに3000人の中国人が、大使館と領事館の支援を受け、帰国しているという。
フィナンシャル・タイムズ紙は、中国は過去にも同様の経験をしていると指摘。数年前のリビアの内戦時には、アフリカで働く数千人の中国人労働者を避難させている。
しかし同紙は、領土問題で自国の強引さが引き起こした緊急事態に対処するのは今回が初めてだと述べた。南シナ海の衝突中国の責任は中国にもあることを示唆している。
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