ASEAN、南シナ海衝突で「深刻な懸念」表明 中国名指しはせず、温度差明らかに

 11日、ベトナムの首都ハノイの中国大使館前では、中国が南シナ海で石油掘削装置(リグ)を設置したことを受け、数百人規模の抗議デモが開かれた。

【ベトナムでデモを容認】
 フィナンシャル・タイムズ紙によれば、規制が厳しい同国でデモが容認されるのはまれであるという。前回デモが容認されたのは2011年で、中国の監視船がベトナムの原油探査船を妨害したことに抗議するものだった。

 中国大使館から通りを隔てた公園では、警察車両の上のスピーカーからも中国に対する非難の放送が流され、国営テレビも待機してデモの模様を収録したという。

【揉めたASEAN会議】
 10日、ミャンマーの首都ネビドーでは、東南アジア諸国連合(ASEAN)の外相会談が開催され、南シナ海における中国とベトナム艦船の衝突に関して、「深刻な懸念」を表明するという緊急共同声明が出された。

 ウォール・ストリート・ジャーナル紙(以下、ウォール紙)によれば、翌11日に開かれた同首脳会議で、ベトナムのズン首相は、南シナ海で中国が危険な違法行為に及んでいる、と述べたという。

 ただ、ベトナムとフィリピンの呼び掛けにもかかわらず、他の参加国は中国を批判することに消極的だったと報じられている。南シナ海で領有権を主張していないシンガポールとタイは肩入れを避け、カンボジアは中国を支持したという。

 採択された首脳宣言でも中国を名指しすることは避けられ、当事国に対して紛争解決のための平和的対話を求める内容にとどまった。

 ウォール紙は、中国に対して強硬な姿勢を示すべきだとする国々と、強力な経済力を持つ中国との関係悪化を恐れる国々との温度差を反映する結果となった、という評論家の意見を紹介している。

【中国領土問題専門家の見方】
 8日のニューヨーク・タイムズ紙は中国政治を専門とするマサチューセッツ工科大学(MIT)のテイラー・フラベル准教授による一問一答形式の解説を掲載している。

 中国の石油リグは「九段線」内にあるというが、中国は九段線にどの程度熱心なのだろうか?

 数十年前から中国の地図に描かれているにもかかわらず、この線の意味について中国は奇妙にも沈黙してきたという。

 この線は、囲まれた地域への領有権の主張を示すものかも知れないが、あるいはもっと広く、EEZ(排他的経済水域)ないし、中国が歴史的に権限を持つ地域を主張しているのかも知れない。

 だが、これらはどれも、海洋に対する権利は領土からのみ主張できるというUNCLOS(海洋法に関する国際連合条約)に抵触するものだとフラベル氏は述べている。

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Text by NewSphere 編集部