中国公船、南シナ海でベトナム船と衝突、負傷者も 近年で最も“深刻“と海外紙が危惧

 7日、南シナ海のパラセル(西沙)諸島付近で、中国の船舶がベトナムの海上警察の船に対し、衝突や放水を繰り返し行った。ベトナムは海上警察と海軍合わせて29隻の艦船を現場海域に派遣しており、双方のにらみ合いが続いている。

【中国とベトナムが衝突に至った経緯】
 ニューヨーク・タイムズ紙によると、3日、この海域に中国最大の沖合石油探査会社・中国海洋石油(CNOOC)が石油掘削装置を搬入した。

 ウォール・ストリート・ジャーナル紙(以下、ウォール紙)によれば、この石油掘削装置は、中国石油業界の「戦略兵器」と呼ばれているという。

 この掘削装置の操業地点が、ベトナム沿岸から138マイル(約220キロメートル)しか離れていなかったため、ベトナム艦隊が出動したのだ。

 6日、中国の楊潔チ国務委員は、ベトナムのファム・ビン・ミン副首相兼外相と電話で会談し、石油掘削装置は中国の水域内にあると主張。これに対してミン外相は、ベトナム政府は南シナ海での正当な利益を守るため、必要なあらゆる措置を取ると述べたという。

 同日、アメリカ国務省のサキ報道官は、中国の一方的な行動は「挑発的で地域平和と安定に役立たない。関係各国は国際法に基づいて、それぞれの主張を明らかにしたうえで、紛争区域でどのような活動が受け入れられるのか合意すべきだ」と述べた。

 中国国営新華社通信は、中国外務報道官のコメントを報じている。

「西沙諸島は中国固有の領土であり、同諸島における中国企業の活動は中国の領有権に基くもので、ベトナムやアメリカには関係がない。アメリカは無責任な発言を行う立場にない」

【フィリピンによる中国船の拿捕】
 同じく7日、フィリピンの海洋警察は、南シナ海・南沙諸島の半月礁付近で、絶滅危惧種であるウミガメ350匹を捕獲していた中国の漁船をだ捕。船長ら11人を逮捕した。

 フィリピン外務省は、排他的経済水域の主権を守るために行ったと発表している。

 これに対して中国外務報道官は、「フィリピン側に合理的な説明を求め、漁船と乗組員の釈放を求めた。われわれはいかなる挑発的行為もとらないよう、フィリピン側に改めて警告する」と述べた。

 ニューヨーク・タイムズ紙は、アメリカとフィリピンが新軍事協定を締結したため、中国がこれをけん制する動きに出たものと見る。

 ウォール紙は、近時の南シナ海における緊張の高まりは、「(アメリカ大統領が)1回訪問してスピーチを行ったぐらいでは解決しないだろう」という、戦略国際問題研究所(CSIS)上級顧問で政治学者のマイケル・グリーン氏の言葉を紹介している。

「それは、この地域における否定的な反応に対して、中国側が慌てることがないのを見れば分かる」

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Text by NewSphere 編集部