安倍首相、NATO演説で中国を名指し批判 尖閣をクリミアになぞらえ、軍事的脅威を強調
欧州を歴訪中の安倍晋三首相は6日、ブリュッセルの北大西洋条約機構(NATO)本部を訪問した。ラスムセン事務総長との会談後、日本とNATOとの連携を強化する新たなパートナーシップ協定に署名した。
今回締結された「国別パートナーシップ協力計画(IPCP)」では、海賊対策、災害救援や人道支援などの分野で協力を深める合意がされている。
【集団的自衛権の重要性を主張】
ロイターは、中国の軍事拡大に脅威を感じている安倍首相が、NATOにも集団的自衛権の行使容認をアピールした、と伝えている。
同メディアによると、安倍首相は28のNATO加盟国大使の前で演説を行い、ロシアが占拠しているクリミアの状況と尖閣諸島問題をなぞらえたという。「中国の対外姿勢、軍事動向は日本を含む国際社会の懸念事項だ」と、名指しで批判。さらに、NATO加盟国に対し、中国への武器輸出を控えるよう求めた。
会談後の共同記者会見でも安倍首相は「我々は、武力による現状変更の強要を容認しません。それは欧州およびウクライナに限ったことではなく、東アジアでも同じであり、さらには世界中で同じことが言えるのです」と語り、欧州諸国に向け理解を求めたという。
ラスムセン事務総長も「欧州大西洋地域とアジア太平洋地域における安全保障を、分けて考えることはできません。このような危機に面した今、日本のように志を同じくするパートナーとの連携強化は世界平和への鍵となるでしょう」と語った(AP)。
【日本の真の狙いは】
日本の目的は「中国の軍事拡大や北朝鮮のミサイル発射および核開発に対する外交支援」と専門家は分析している(ロイター)。
では、その外交支援とは、具体的にはどういうものなのか。防衛研究所の鶴岡路人氏が昨年NATO国防大学に寄せた論文では、「日本は、NATOによるアジア太平洋地域での直接の軍事的役割を期待しているわけではなく、日本と同様の認識を共有してくれることを望んでいる」と分析されている。
NATOは、アフガニスタンでの活動を終えつつある。かつ一方ロシアは勢力を伸ばそうとしている。そんな今、NATOの意識は再び自身の領土を守ろうとする方向にむかっており、これは日本を含むNATO外のパートナーにとっては歓迎できない傾向とロイターは指摘する。安倍首相からすれば、中国が急速に軍事勢力を拡大し集団的自衛権行使の容認に向け意を決する中、認識だけでも共有してほしい、といった思惑だろうか。
ラスムセン事務総長はこのような安倍首相の動きに対し、「NATOは、日本による平和への積極的な貢献を歓迎する」と支持する旨を表明している。
【韓国メディアも集団的自衛権の強調に注目】
また韓国国際放送交流財団のサイト『アリラン』も、安倍首相が集団的自衛権の行使容認に向けた願いを強調したことについて重点的に報じている。
同メディアは「安倍首相は、中国の最近の軍事行動と軍事費の拡大に懸念を表明しつつ、世界平和により貢献するためにも集団的自衛権への自主禁止を撤廃したいという思いをNATOに向け訴えた」と伝えている。日本の軍事拡大は韓国に取っても関心が高い問題であるだけに、注目が高いようだ。
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