対馬から盗んだ仏像、「返すべき」と韓国紙報道 変化の背景にはアメリカの動き

 韓国人窃盗団によって対馬から盗まれた仏像に対し、「返還すべき」との声を韓国紙が報じている。仏像はもともと韓国から日本が略奪したものという浮石寺の提訴を受け、韓国の地方裁は、「日本に返還してはならない」という判決を下していた。

【日本から盗んだ仏像、返還すべきとの声】
 この事件は2012年、長崎県対馬市の神社・仏閣から、韓国人窃盗団が仏像を盗み、韓国に持ち出したもの。犯人は2013年に逮捕され、盗品も回収された。盗まれた仏像は、海神神社の国指定重要文化財「銅造如来立像」と、観音寺の長崎県指定有形文化財「観世音菩薩坐像」だった。

 これに対し、韓国では、観音寺の仏像は、もともと韓国の浮石寺に安置され、倭寇が強奪したものだという主張が展開された。韓国メディアも、「もともと韓国所有だったものをなぜ返すのか」(中央日報)など。反日感情あらわな報道を展開していた。

 しかし21日付中央日報は、「日本に戻すのが正しい」(国外所在文化財財団の安理事長)という意見を報じている。海外文化財返還窓口のトップである同氏は、「時代と国を問わず文化財と関連した不法行為は容認してはならない」と断じた。国際条約に明確に違反する韓国地裁の判決のせいで、この分野で日本との協力が困難になる、と批判を強めている。

 また「銅像如来立像」については、日本に即時返還するよう、韓国の市民団体が文化財庁を相手に訴訟を起こしている。判決は5月2日に言い渡される。

【対馬市民は困惑?米紙の報道】
 他方、対馬市民は複雑な心境である、とニューヨーク・タイムズ紙は紹介している。1体100万ドル(1億円)以上の価値がある仏像を、盗んで返さない韓国に憤りを感じる一方、韓国人観光客で対馬経済が潤っている実情をあげている。

 韓国から船で1-2時間、7万ウォン(約7000円)と手軽な対馬への海外旅行(対馬)は人気で、旅行者は年々増加。2012年は29万人を超えた。

【アメリカから韓国に国宝級文化財が返還される】
 韓国の変化の背景には、文化財の返還機運が高まり、一部で成果を挙げていることがある。

 まず、朝鮮戦争当時に米軍が持ち出した旧韓国の文化財9点が、オバマ米大統領の公式訪韓(25-26日)に合わせて返還される予定だ。旧韓国時代の国の印鑑「国璽(こくじ)」や、王室で官吏の任命や命令の際使用した「諭書之宝」などの国宝級文化財などが返還予定、と韓国文化財庁が20日、明らかにしたという。

 これまで返還協議を続けてきた韓国当局にとっては功を奏した形だ。なお対象11点のうち、残り2点はいつ返還されるか定かではないという(朝鮮日報)。

【文化財という米国の“プレゼント”に韓国は】
 ただ、文化財の返還は“外交カード”として利用されることがある。中央日報は文化財返還という“プレゼント”に「タダはない」、と報じている。実際過去には、フランスが、文化財返還の代わりに同国企業のTGV(高速鉄道)導入を迫ったという。

 ロシアと中国への警戒から、アメリカは日韓との協力を重要視していると同紙はみている。オバマ大統領の訪韓に合わせた発表は、中国寄りの言動が目立ち、反日姿勢を崩さない朴大統領に対するメッセージとかんがえられる。

 不法に持ち出された仏像(文化財)は返還すべき、と国際条約では定められているが、韓国は日本の文化財へどのように対応するか、出方が注目される。

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Text by NewSphere 編集部