中国で広がる反マレーシア運動 政府が自国の問題から目をそらさせるためか?海外紙分析
3月8日に消息を絶って以来、未だに発見されていないマレーシア航空MH370便を巡り、中国とマレーシアの関係が緊張している。
【中国政府が後押し?マレーシア政府抗議デモ】
3月24日、マレーシアのナジブ首相は、緊急会見を開き、同機がインド洋南部に墜落したとの見解を発表した。25日、中国人乗客の親族ら数十人が集まり、説明を求めて北京のマレーシア大使館前で抗議活動を行った。
当機の乗客227人中3分の2は中国人であるが、乗客の親族はマレーシア政府の公式見解に納得していない。抗議デモに参加した親族らは、「マレーシア航空、真実を明かせ!」等と書かれたプラカードを掲げ、北京の路上を練り歩いた。中国政府の指導がなければ不可能な行動である、とウォール・ストリート・ジャーナルは指摘している。
「自国の政治問題から注意をそらさせるために乗客家族を利用した」中国政府に対し、マレーシア政府は苛立ちを覚えている、と同紙は報道している。
【中国で広がる反マレーシア運動】
4月2日、マレーシア東部のサバ州に位置するダイビング・リゾートで、武装グループが中国人観光客とフィリピン人のホテル従業員を誘拐した。
同事件は、すぐに新浪微博(中国のミニブログ)で大きな話題となった。「命を大切に、マレーシアには行くな」などのコメントが寄せられた、と米ニュースサイトQUARTSは報道している。
中国人芸能人らがマレーシア旅行をボイコットするように呼び掛けており、個人や団体旅行客によるキャンセルが相次いでいる。人気俳優チェン・クンもツィッター上で、「マレーシア製品をボイコットする」と言明し、波紋を呼んでいる。
【長期的には安定との見方も】
行方不明の旅客機をきっかけにヒビが入った両国の関係だが、長期的には修復するとの見方もある。
マレーシア政府と中国政府高官による最近の発言によると、両国の積極的な協力関係を強調しており、中国人家族によるマレーシア政府の批判を控えめに取り上げている、とCNNは指摘している。
両国の密接な経済関係も重要な要素だ。マレーシアの国際貿易産業省によると、2013年、中国は5年連続でマレーシアの最大貿易相手国となった。同年、両国間の貿易は12.5%増加し、634億ドルとなった。
CNNは、「観光業は多少の減少が見られるかもしれないが、輸出に変化はない」という識者の意見を紹介している。マレーシアの主要輸出品である電気部品や原材料(生ゴムやパーム油等)は、中国経済にとって欠かせないものである。CNNは、これらの「ボイコットを組織するのは困難だろう」と結んでいる。
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