中国、なぜマレーシア機捜索に尽力? 南シナ海常駐のための口実との見方も
8日にクアラルンプールから北京に向けて飛び立ったまま、消息を絶っていたマレーシア航空370便について、マレーシアのナジブ首相は25日、同機がインド洋南部に墜落したと発表した。
この間、各国の協力により行われた捜索において、終始率先して活動を行い、存在感を示していたのが中国だった。乗員乗客239名中154名が中国人だったことが大きな要因だが、それ以外にもねらいがあったのだろう、と各紙は分析している。
【非常に貴重な訓練の機会】
ブルームバーグは、イギリス・ノッティンガム大学中国政策研究所員の「これは中国軍にとって、非常に貴重な訓練だった。こんな機会はこれまでなかっただろう」という言葉を紹介している。
また、シンガポール国立大学のある研究員はブルームバーグに対して、「中国指導者はこの事故をきっかけに自国民に対して、『(真相解明に熱心でない)マレーシア政府の連中ではなく自分たちが指導者だとは、あなたがたは恵まれている』と言うのだろう」と語ったという。
【南シナ海の常駐監視】
ワシントン・タイムズ紙は、マレーシア機の予想飛行経路は、ちょうど中国が他国と領土問題を抱えている地域であり、中国による熱心な捜索は軍事情報を得るためであり、そうでなくても軍事力を誇示する絶好の機会だっただろうと述べる。
インド洋と南シナ海を捜索していた中国は、25日にマレーシアの首相が同機のインド洋への墜落を発表すると、これを否定して怒りをあらわにした。それは、あたかも中国軍による巡回監視が終わらせられることへの怒りのようだった、と同紙は報じる。中国は同機が見つかるまで捜索を続けると誓っているが、これは常駐の口実ともなりうるものだとも指摘する。
なお今回、ベトナムとオーストラリアは中国による領空内の捜索を認めたが、インドは拒絶したという。
【ビッグ・ブラザーか慈愛に満ちた盟友か】
タイム誌は、今回のマレーシア機捜索で、中国が「ビッグ・ブラザー」的に、近隣諸国全ての動きを監視しようとするスタンスが明らかになったと見る。東南アジア諸国の多くは、かつては中国の属国だった時代がある。このため、これらの国々に対する中国の態度は、「ビッグ・ブラザー」と「慈愛に満ちた盟友」との間で揺れているという。
中国はマレーシアとの間でも、南シナ海の島嶼の領有権をめぐる紛争を抱えている。1月に中国軍がマレーシア領ボルネオで演習を行うと、マレーシアは慎重に他の東南アジア諸国に対して対中包囲網を働きかけたという。昨年、マレーシアは中国軍が演習を行っている海域付近のある島に、新たな海軍基地を建設すると発表していた。
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