8100万人から8兆円集める 中国アリババの投資ファンド好調も、海外紙は“経済のリスク要因”
電子商取引大手のアリババ集団が昨年6月に開始したオンラインMMF(マネー・マーケット・ファンド)「余額宝」の顧客数が、2月末時点で8,100万人に達した。これに対し、中国全体の株式取引の利用口座数は、3月初めの時点で約7,700万口座であった。「余額宝」の顧客数が、中国全体の株式投資者数を上回ったことになる。
この爆発的な成長により、「余額宝」は世界で4番目に大きな規模のMMFになった。フィナンシャル・タイムズ紙によると、「余額宝」の運用資産残高は3月第2週までに5,000億元(814億ドル)に達した。
「余額宝」が発売開始10ヶ月で驚異的な急成長を遂げたのはなぜだろうか。
【高金利と資金引出の利便性】
投資家が「余額宝」に殺到している理由は、年率6%前後の金利と必要に応じて資金を引き出せる利便性だ、とフィナンシャル・タイムズ紙は指摘している。「余額宝」の高金利に対し、主要銀行の普通預金の年利は0.35%である。また、1年物定期預金の年利上限は3.3%に定められている。
オンラインMMFを提供しているのはアリババだけではない。ウォール・ストリート・ジャーナル紙によると、ネット大手のテンセント・ホールディングスは同社のファンド「理財通」に500億元を集めた。同国最大の検索エンジン「百度」も同様のファンドを販売している。
【金利の低下と規制強化の兆し】
大人気のオンラインMMFだが、懸念の声もある。
中央銀行である中国人民銀行が人民元安に誘導している結果、金利が低下し始めている。ウォール紙によると、「余額宝」と「理財通」の今年のピーク時の利回りはそれぞれ、6.8%と7.9%だった。しかし、現在は両者とも6%未満である。金利の低下が続くなら、銀行預金に対するオンラインMMFの優位性が失われてしまう。
また、オンライン金融の急拡大は、多額の債務の上に成り立つ中国経済のリスク要因になりかねない、とフィナンシャル・タイムズ紙は指摘する。「これら(新たなオンライン金融商品)は中国の金融システムを奈落の底に落とす可能性をはらむ」と北京大学経済学院金融科の呂随啓副主任は言明した。
これに加え、中国当局はオンラインMMFに対する監視を強めている。何十億ドルもの資金が、ほとんど規制されていない投資商品に流れ込んでいるためだ。中国人民銀の周小川総裁は、同種の商品の「取り締まり」はしないとしたものの、規制を修正する方針を示した、と新華社通信は伝えている。
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