“百害あって一利なし” 夏時間に入ったアメリカで、制度廃止を求める声

 夏時間(サマータイム、デイライト・セービング・タイム)は、夏の間太陽の出ている時間を有効活用する目的で用いられている制度だ。現在の主な導入国では実施期間が7~8カ月にも及び、通常時間より長くなっている。日本でも一時導入の話が持ち上がっていた制度だが、海外メディアはこぞって無利益を論じた。

【夏時間制度の歴史】
 ビジネス誌『フォーブス』によると、夏時間の基礎となる考えはベンジャミン・フランクリンの『An Economical Project』というエッセイの一文にある。ろうそくを燃やす時間を計算し、代わりに日光を利用することによって節約できる時間について言及した。風刺に過ぎないという受け止め方もある一方で、今日の夏時間の基礎となる概念を確立したことは確かだ。結果として多くのエネルギー法案が夏時間の変更に影響を与えてきたという。

 英建築業者ウィリアム・ウィレット氏が現方式の夏時間を提唱、第一次世界大戦中にドイツが導入、続いてイギリスが導入に踏み切った。アメリカでは1966年、最初の夏時間が毎年4月最後の日曜日から10月最後の日曜日までと定められた。最終的にブッシュ政権下2005年エネルギー政策法に伴い、3月第2週目の日曜日から11月最初の日曜にまでに変更され現在に至る。

【制度の実状と影響】
 日光の照らす明るい時間に昼間を伸ばすことによって、日光を有効活用し夕方以降のエネルギー消費を減らすことが最大の目的だ。『フォーブス』は、一見論理的だが期待されるほどの結果は出ていないのが現状だと論じる。調査によると、エネルギー消費量に多少の変化は見られるものの、夕方以降の消費減少が逆に朝の消費増加によって埋め合わされてしまうという。住む場所によってもエネルギー需要は異なり、年間を通して涼しい気候の地域では夏場の冷房需要が普段の省エネ分を埋め合わせてしまう。

 2010年ユタ州立大学経済学者ウィリアム・F・シュガートII氏は、18歳以上のアメリカ人が、生産的活動に使うことのできる10分間を時計の時間合わせに費やしている、という考えに基づいてその損失を計算した。毎年の損失は17億ドルにもなると予想している。

 NYブログサイト『gothamist』では、以下のような影響を取り上げた。
・効果のあるなしに関わらず、突然1時間のずれが生じることによって心と体に及ぼされる影響が懸念される。
・専門家によると、夏時間が始まった最初の月曜日に交通事故が急増する傾向がある
・医学誌『アメリカン・ジャーナル・オブ・カーディオロジー』によると、夏時間が始まった最初の週は心臓発作も増加する。
・睡魔から勤務中のインターネット私的利用が急増加するという。

【各メディアの結論】
 『フォーブス』は、アメリカ人は夏時間の意義に懐疑的であると結論づけた。また『Universe Today』では、夏時間やタイムゾーンを廃止しグリニッジ標準時で知られるユニバーサルタイムを導入してはどうかと提案している。

 『gothamist』では、以下のように制度の無利益を指摘している。
・もとはと言えばベンジャミン・フランクリンがろうそくを節約しようとして始まったこと。
・ゴルフ好きのウッドロウ・ウィルソン大統領が数時間長くゴルフを楽しむために導入された制度。
・期待されている効果が出ていない。

 同サイトは、日光を有効に使いたいと主張するのであれば夏時間を標準時間にするべきと結論付けている。

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Text by NewSphere 編集部