“日本だけ”ロシアに甘い? ウクライナ情勢めぐり、海外紙から厳しい批判

 ロシアがウクライナ東部のクリミア半島掌握に軍を動かしたことで緊張が続いていたが、プーチン大統領は4日、会見で「当面軍事行使はない」ことを発表した。

 とりあえずは最悪の事態を免れたとして、市場はリスク回避の動きがいったん収束した模様。安全策として買われ続けていた円はここ7週間で最も大きく値を下げ、TOPIXは1.4%上昇した。

 しかしプーチン大統領は、今後の情勢次第では本格的な軍事介入に踏み切る可能性も示唆しており、予断を許さない状況となっている。

【海外紙はプーチン大統領を痛烈に批判】
 フィナンシャル・タイムズ紙は、プーチン大統領の会見を「皮肉に満ちたお決まりの手法」と報じている。

 同紙は、「ウクライナにロシア軍は“必要ない”」というプーチン大統領の言葉には、事実上クリミアを掌握したから攻撃の必要がなくなった、という意味だとみている。

 またプーチン大統領は「クリミア半島にいる兵士はロシア軍ではなく地元の志願兵」とも語り、これに関してはウクライナ西部住民の不信感をいっそう高める発言、と同紙は指摘している。よって大統領の「クリミアをロシアに併合するつもりはない」という発言も彼らにとっては眉唾ものだろう、との見方を示している。

 実際、この会見に対しては、オバマ米大統領も「(欧米や同盟国は)ロシアの行為を国際法違反だとみている。誰もだまされない」と厳しく批判した。

【そんな中、日本がロシアに味方している?!】
 G7はロシアを非難する共同声明を発表し、経済制裁を検討している最中である。しかしこうした状況下で、日本は「G7の一員なのにロシアの味方をしている」という声が海外メディアから挙がっている。

 日本政府は「ウクライナの主権と領土統一を尊重する」と発言するにとどまり、G7共同声明と比べるとだいぶ穏やかな対応、とロイターは報じる。さらに、日本はロシアとの関係改善を続けると言い、外交上・経済政策上の変更がないことを発表している、と同メディアは伝えている。

 実際、安倍首相は就任以来、世界のどの首脳よりプーチン大統領と会った回数が多い。岸田外相も4月に予定しているロシア訪問について今のところ変更なしと発表している、と同メディアは伝える。

【背景にエネルギー事情】
 日本がロシアを突き放せない背景には実に多くの事情がある、とロイターは指摘する。そのひとつとして、エネルギー資源問題が重要なカギ、というのが同メディアの分析だ。

 日本は2011年に福島でおきた事故以来、国内の原発が稼働停止中のため輸入資源に頼らざるを得なくなっている。同メディアによると、日本はいまや天然液化ガスの消費量が世界3位となっており、政府は民間企業も巻き込んで輸入を促進している。そのうち10%が、ロシアからの輸入に頼っている状態だ。

 今回の件で西側諸国とロシアの関係が悪化すれば、せっかく築き上げてきたエネルギー計画が潰されてしまうかもしれない。日本がロシアとの関係を崩せない理由は他にも北方領土問題など多々あるが、こうしたエネルギー資源事情も間違いなくそのひとつ、というのがロイターの見方のようだ。

 経済情報サイト『Investing.com』によると、日本は2011年の原発事故以来、エネルギー資源保全ランキングが下落している。やはり輸入資源に頼らざるを得ない状況が原因だ。西側諸国とロシアとの間で板挟みの厳しい状況でどう対応するか、安倍政権の外交手腕が問われる局面となっている。

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Text by NewSphere 編集部