“なぜ公表する?” 韓国の北朝鮮サイバー攻撃計画に、海外紙が懸念

 2月19日、韓国の国防部は、北朝鮮の核施設を攻撃するサイバー兵器の開発計画を発表した。2010年のイランに対するサイバー攻撃の際に使用されたスタックスネットの類似品を開発するという。

【異例の公表】
 2010年に、韓国は北朝鮮のハッカーの侵入からサイバー空間を守るためにサイバー軍を創設した。当軍の任務は、北朝鮮由来のサイバー攻撃から脆弱なネットワークを保護し、北朝鮮政府に対し心理的軍事作戦を行う事だった。今回、その軍隊に北朝鮮の核施設やミサイル施設を攻撃する能力を付与すると発表された。劇的な変化である、と海外ニュースメディア、ディプロマットは報道している。

 サイバー戦争に備えている国は少なくない。しかし、その詳細を発表し、しかもその標的を公にする事はまずない。2010年のイランに対するサイバー攻撃に関しても、アメリカとイスラエルが行ったとされているが、両国は関与を認めていない。

 サイバー政策を内密にするのは法的また政治的に十分な理由がある。韓国の場合、サイバー攻撃が北朝鮮からの通常兵器による反撃を招くだけではない。韓国政府の今回の発表のおかげで、北朝鮮は先制的自衛権を行使する法的な根拠を得たことになる。

 不利な条件の中で、韓国がサイバー兵器開発計画を発表したのはなぜだろうか。

【北朝鮮に対する抑止効果を狙ったのか】
 北朝鮮は、何年もの間、韓国を壊滅させると威嚇してきた。2009年および2013年には、北朝鮮は韓国のネットワークを衰弱させる一連のサイバー攻撃を行ったと見られている。サイバー兵器開発の発表により、韓国は北朝鮮に対する抑止効果を狙ったのかもしれない、とイギリスBBCは分析している。

 韓国は、ネット国家であるゆえに、サイバー攻撃の標的となりやすい。一方、北朝鮮はネット接続が非常に限られているゆえに、攻撃の標的が少ない。となると、残る選択肢は通常の戦争か、もしくは、韓国がサイバー空間でも北朝鮮を攻撃することができると北朝鮮に納得させることだ。

【サイバー攻撃の危険性】
 しかし、これは危険なゲームだ、とBBCは指摘する。スタックスネットの類似品を使用するという韓国の発表自体が、国連憲章2条に違反する。その条項は、他国に対する武力による威嚇もしくは武力の行使を禁じている。

 さらに別のBBCの記事は、「スタックスネットの様なウイルスは国境を超える。韓国が開発した北朝鮮向けサイバー攻撃のウイルスが、自国のインフラを攻撃する結果になりかねない」、「ウイルスがばら撒かれた後、世界中のハッカーや軍関係者がそのサンプルを研究し使用することも危惧される」とサイバー攻撃による弊害について言及している。

 朝鮮半島における緊張が高まっている。韓国の西側同盟諸国の願いは、韓国政府幹部が不用意な発言を慎むことだ、とBBCの記事は結んでいる。

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Text by NewSphere 編集部