オバマ側近は中国通ばかり? 海外論客が日米関係を危惧
日本政府が憲法の解釈変更を行い、集団的自衛権の行使を可能にしようとする姿勢を見せる中、海外論客の日米関係に対する懸念が高まっているようだ。
【中国との対決につながるとみるアメリカ】
フィナンシャル・タイムズ紙のデビッド・ピリング氏は論説の中で、安倍首相は、ついにアメリカが数十年来催促してきた、平和主義日本の「たかり屋的」防衛ドクトリンを見直そうとしているが、一方のアメリカは逃げ腰であると述べる。
例えば、昨年末に安倍首相が行った靖国神社参拝に対する「失望」表明である。アメリカはこれまでも靖国参拝に関して、非公式に不満をもらしたことはあったが、公式にとがめた事はなかった。日本政府は「失望」という表現に驚いたのでは、とみられる。
実際、衛藤晟一首相補佐官は、米政府について、「むしろわれわれのほうが失望だ」と動画サイトで批判していた。なお同氏は、「政府見解だと誤解を与える」として、発言を撤回し、動画も削除した。
また、中国が尖閣諸島を含む東シナ海上空に防空識別圏を設定した際にも、訪中したアメリカのバイデン副大統領は事を荒立てようとしなかった。習主席との会談後の記者会見で、この件についてふれなかったのだ。
日本政府の多数派は、アメリカが中国の一方的な動きに事実上屈したと考えている。オバマ大統領の周りは中国に夢中の側近ばかりで「日本通」がいないのだ。もはやアメリカが日本を守ることはあてにできない、という感情が、日本政府内で募っていると同氏は論じた。
【安倍首相の周りは右派】
一方、ウォール・ストリート・ジャーナル紙のアンドリュー・ブラウン氏は、安倍首相が周囲に率直な物言いをする側近を集めており、その多くは右派だと述べる。「彼らは重要な問題について首相の考えを知る手がかりを提供する」としつつ、同氏は、本田悦朗内閣官房参与に対するインタビューを紹介している。
本田氏はアベノミクスで中心的な役割を担っているが、熱きナショナリストでもあり、第2次大戦中の神風特攻隊の「自己犠牲」の精神について語り、涙ぐんだという。
本田氏はアベノミクスの背後にナショナリスト的な目標があることを隠そうとしなかったという。同氏は、日本が力強い経済を必要としているのは、賃金上昇と生活向上のためだけではなく、より強力な軍隊を持って中国に対峙できるようにするためでもあり、中国に対しては「深刻な脅威を感じている」と語ったという。
なお同氏は、「靖国神社は日本国民にとって特別な場所という例として説明した。ああいう記事になり予想外だ」と、語ったという(共同通信)。
【安倍政権にワシントンは嫌気】
ワシントンでは、安倍首相に対する嫌悪感が広がっている、とフィナンシャル・タイムズ紙のピリング氏は述べる。経済再生、沖縄基地問題、防衛費増額はいずれもアメリカの指示通りだが、これらの政策は高くつくだろうというのが、アメリカ政府の見方だという。