“アメリカは日本を守ってくれるのか?” 高まる中国の影響力、海外メディアも懸念
日米両国は今年、「日米防衛協力のための指針(ガイドライン)」を17年ぶりに見直すことで合意している。これは、日本が武力攻撃を受けたり、周辺有事が起きた際の、自衛隊とアメリカ軍との役割分担を定めたものだ。
一方で、ロイターによれば、“アメリカが有事の際に本当に日本を守ってくれるのか”という懸念が、日本の中で生まれつつあるという。安倍首相に近い、ある元外交当局者は、「最悪のシナリオに備える必要もある」と語り、アメリカの戦う姿勢の後退を懸念している。
フォーブス誌も、日経新聞が最近行った読者アンケートを紹介している。「中国の台頭が顕著になる中で日米同盟体制に不安を感じるか」という問いに対して、50%が「若干感じる」、34%が「非常に感じる」と答えたという。
【増大する中国の影響力】
このような懸念は、中国の影響力が増大する一方で、アメリカの力が長期的に低下し、米中関係の重要さが増したことも理由だろうとロイターは分析する。
佐々江賢一郎駐米大使も先月29日、オバマ大統領が4月に予定するアジア歴訪について「多くの国や地域は、誰が友人で同盟国なのか、誰がトラブルメーカーなのかをアメリカがはっきりさせることを望んでいる」と述べた。
【アメリカはどう言っているのか】
アメリカはいつものように、60年来続いている日米同盟は堅固だと繰り返している。ロイターによれば、「日米同盟はアジア地域の安全保障と繁栄の礎であり、アメリカ政府は日米同盟を強化することにコミットしている」とアメリカ国防省の高官は語ったという。
さらに「中国は日米関係に楔を打ち込もうとしているのか」との質問に対して、ロックリア米太平洋軍司令官は、「それは中国に聞くべきだろう。この同盟関係は難攻不落だ」と答えたと、フィナンシャル・タイムズ紙は伝えている。
【安倍首相の夢】
日米同盟への懸念はまた、安倍首相が祖父の岸信介元首相から受け継いだ、より対等な日米関係の模索という保守派の計画を正当化するものだとロイターは報じる。安倍首相はアメリカの起草とされる憲法を改正したいのだが、短期的には解釈変更で対応しようとしているのだ。
安倍首相の望む憲法解釈の見直しについては、法整備に向けた議論を進めている政府の有識者会合が、4月ごろまでに報告書をまとめる予定だ。敵基地先制攻撃能力を日本が保有すべきかどうかも協議される見通しだが、強硬な反対が見込まれる。さらに、巡航ミサイルや攻撃用無人機、静止衛星、特殊部隊などをそろえるには多額の費用が必要で、結論が出るまでには時間がかかりそうだという。
安倍首相は集団的自衛権を政策日程に載せることはできたが、今は米中に気兼ねして政争の具にしたくないのだろうとロイターは見ている。