自衛隊、韓国軍に1万発の銃弾提供 集団的自衛権議論にも影響か?
23日、政府は国連南スーダン平和維持活動(UNMISS)の韓国軍に、同じく参加している自衛隊から、小銃弾1万発の供与を決定した。武器禁輸原則に反するとの懸念がある決定だが、それ以前に、紛争の激化で平和維持軍が戦闘に巻き込まれるリスクが増大していることから、自衛隊の派遣自体について、集団的自衛権の問題が持ち上がってきている。
【殺るか殺られるか、追い込まれる両派】
南スーダンではサルバ・キール大統領とリエック・マチャール元副大統領との確執が、14日のマチャール派による大統領府襲撃事件から、ディンカ族(キール派)とヌエル族(マチャール派)の部族抗争へと発展している。首都ジュバではすでに500人以上が死亡したとされ、避難民も10万人を超えているという。
ブルームバーグは、両派が対話の意思を示している事を伝えてはいるが、反政府側に転じて担任地域だったユニティ州やジョングレイ州を奪取した将軍らは、「政府は私を殺すことを計画していて、私には行き場がありません」などと語っているという。ユニティ州は産油地帯で、石油収入が歳入の95%を占める南スーダンにとっても非常に重要な地域であるが、産出される低硫黄石油は日本でも重視されている。
【PKOは安全なのか?イラク派兵の再現】
さらに、平和維持軍インド部隊が攻撃を受け3人が死亡したことや、アメリカ人の避難活動にあたっていた米軍ヘリが攻撃され、米兵4人が負傷したことで、平和維持軍の危険度も高まってきている。
オールアフリカは、安倍政権がいかに平和憲法の再解釈を推進しているとしても、平和維持軍の自衛隊が緊急事態に際し、殺傷力の行使を含めた自由を認められているとは言い難いと指摘する。例えば、味方のルワンダ軍が攻撃された場合の救援も、集団的自衛権に抵触する恐れがあり、平和維持軍の混成部隊のほうが暴走する可能性さえある。したがって、政治的、法的、および社会的な変化を待たずして、日本はまだこうした平和維持活動に参加できる状態ではないと、活動の再考を促している。
【銃弾の供与は歓迎されているのか】
フィナンシャル・タイムズ紙は、銃弾の供与について、先週の防衛大綱改正で国防支出増や同盟軍との連携強化、武器禁輸見直しなどが謳われたことの一環だと報じている。仮想敵とされた中国の外務部は、「時代遅れのアイデアを焼き直し『中国脅威論』を誇大広告、地域の緊張を再生し、武器拡散の言い訳を安全保障と地域平和の維持に偽装している」と訴えたと報じられている。
同記事は、銃弾供与先の韓国もまた、竹島問題や歴史認識問題をめぐって日本と不和である事に言及しており、アジアの緊張増大を懸念する論調である。