折り紙技術にNASAが注目 いずれは“小惑星を捕まえる折り畳みの網”も
最近打ち上げの成功が続いているキューブサット(超小型人工衛星)は、宇宙研究がより多くの人にとって身近なものになる可能性を示している。アメリカのブリガムヤング大学(BYU)は、そのような小さな人工衛星上でも宇宙ステーションの設備をまかなうほどの電力を発電する、ソーラーパネルの開発に取り組んでいる。
そして今回彼らは、日本古来の芸術「折り紙」に目をつけた。同大学のラリー・ハウエル教授が、折り紙デザインのコンピューター解析と数学の第一人者ロバート・ラング氏に研究への協力を求めたのだ。
ハウエル教授は、「宇宙に物を運ぶのは費用のかかる難しい作業だ。そのため、宇宙に運ぶものはできるだけ小さくしなければならない」「折り紙の技術を使えば、荷物を小さく畳んで持ち出すことができ、宇宙に出た時に大きく広げることができる」と共同研究の狙いを説明している。
【宇宙ステーション3つ分の電力を発電】
BYUは現在ラング氏の協力のもと、アメリカ航空宇宙局(NASA)のジェット推進研究所と緊密に連携しながら、直径25m、厚さ1cmのシリコン製ソーラーパネルを2.7mの大きさにまで畳む技術を研究中だ、と海外各紙が報じている。新しいソーラーパネルはこれまでの宇宙ステーションのソーラーパネル約3つ分、250kwもの電力を発電することが期待されているという。
ワイアードによると、同研究チームは今のところ、広げた時に直径1.25mとなる試作品を製作したに過ぎないが、数年間のうちに技術を確立したいとしている。
ラング氏は、「この共同研究でどんな成果が得られるか予想することは難しいが、私たちの開発した技術をもとに作られたソーラーパネルがNASAで採用されたとしたら、大きな成功と言えるだろう」「折り紙デザインは、アンテナやソーラーセイル(薄膜鏡を巨大な帆として、太陽などの恒星から発せられる光やイオンなどを反射することで宇宙船の推力に変える器具)へと応用が可能だろうし、小惑星を捕まえる折り畳みタイプの網を作ることだってできるだろう」と研究の大きな可能性を示唆している。
【期待される様々な分野への応用】
同研究チームは、「研究成果は一般的に広く応用が期待されるもので、様々な機能に利用できる」と説明している。ハウエル氏らは、折り紙デザインが宇宙開発以外の多くの分野で革命を起こす可能性があると期待しているようだ。
例として、
・身体の小さな切り口から、折り畳んだステントなどの器具を挿入し体内で広げる。
・必要に応じて飛び出す家庭用電話機。
・輸送や空中から地上へ落とす際には小さく、必要に応じて広げることができる持ち運びが容易な住居や避難施設。
などを挙げている。
同氏らは、折り紙デザインを利用した様々な研究のため、さらに数年間共同して取り組む予定だが、NASAは出来るだけ早い宇宙開発への利用実現を期待しているようだ。