赤ちゃんポスト、中国でも続々設置 最後の希望か、子捨て山か?

 2007年に熊本県の慈恵病院で、「こうのとりのゆりかご」として運営が開始された赤ちゃんポスト。6年間で預けられた赤ちゃんは92人。安易な子捨てを促すなどの反対意見もある中、必要とする人がいるのも現実だ。

 赤ちゃんポストを巡っては、各国でも設置の是非やその問題点が問われている。お隣中国では2011年河北省で第一号が設置された。今後は政府の“嬰児安全島実施草案”に基づき、全国各地で続々と運用が始まる予定で、注目が集まっている。

【多くに重度の障害 真のセーフティーネットにしていくための課題】
 2011年に河北省石家庄の福祉施設が運営を開始した、中国初の赤ちゃんポスト。新快網によると、預けられた子供は2年間で181人。その多くは重度の障がいを持っているという。農村部などの貧困家庭では、多額の治療費が払いきれずに手放す例が多い。「子供の治療費で何もかも底をつきました。どうかこの子を助けてください…」涙の跡の残る一枚のメモが添えられていることもあった、と施設職員は語る。

 また、こうした子供たちは里親の希望者も少なく、施設が引き取っているのが現状だ。スウェーデンでは、障がいを持つ子の里親になった場合、政府がその医療費を全額負担するなどの政策が取られている。今後赤ちゃんポストの設置と同時に、こうした助成制度を中国でも充実させていく必要がある、と網易新聞などは報道した。

【各国の幼児遺棄を巡る現状と、赤ちゃんポストへの取り組み】
 信息時報などによると、現在赤ちゃんポストを実施している国は、日本を含め、ドイツ、アメリカ、パキスタン、南アフリカ、韓国など10数ヶ国。設置数はドイツが最も多く、99ヶ所である。しかしその利用数は年平均1~2人と少ない。また、預けてから8週間以内であれば、引き取りが可能だ。

 2年前に運営が開始されたロシアでは、毎年数千人の遺棄児童が発見されるなど、捨て子が社会問題となっていた。発見されないままのケースも含めると、実際はさらに多いと見られている。ポストの扉は、赤ちゃんを入れてから30秒で自動的に閉まるようになっており、閉まれば外から開けることはできない。母親に与えられた考慮の時間は30秒だけである。

 また韓国では、2009年にソウルの教会が独自に赤ちゃんポストの運用を開始。政府は設置に反対の姿勢を示している。韓国には、母親が25歳以下の母子家庭に対する助成金制度がある。しかしその額は月に15万ウォン(約14,700円)ほど。教会の李牧師は「設置に反対する前に、援助を手厚くするべき」と訴えている。

【“子捨て山”になってはならない】
 先日、公益時報が新浪公益と合同で行ったネット調査では、「赤ちゃんポストは子供の命を救うか」という質問に、62%が「そう思う」と回答。同時に「安易な子捨てを促す可能性があるか」の問いにも53.8%が「そう思う」と答えている。日本でも「戸籍に入れたくない」「育てたくない」などの身勝手な理由での預け入れが報告されている。

 新快網によると、遺棄された子供の多くは屋外に放置され、餓死や凍死の状態で発見される例も少なくない。中には、体にアリやトカゲが這っていることもあったという。河北省の同施設職員は「一度寒空の下に置かれた赤ちゃんを見れば分かりますよ。捨て子をなくすことはできない。しかしポストで捨てられた子の命を救うことはできる」と、その必要性を語った。

 安易な預け入れを防ぐと同時に、赤ちゃんポストが最後の希望という状況で預けられた子の命を救う。そこを目指した取り組みが、今後の共通の課題となりそうだ。

Text by NewSphere 編集部