中国メディア、大気汚染のメリットを報道 「敵国の監視を防ぐ」
中国東部の大気汚染が深刻な状況だ。一部地域では学校の休校が相次いだ。中国民間航空事業団は、パイロットに対し、視界が悪い環境で着陸する資格の取得を2014年1月より義務付ける。環境基準を満たさない製鉄所の閉鎖が指示されたり、大都市を中心に自動車の購入制限措置が導入されたりと、政府もさらに対策を強化する姿勢だ。
【中国メディアの「大気汚染のメリット」報道に批判集まる】
背景には、冬季の燃料消費増加があるとフォーリン・ポリシーは伝えている。同紙は、燃料使用と共に増加する健康被害に触れながらも、新しく浮上してきた問題ではない、と分析している。
中国では、大気汚染により肺がんが増加しているという。北京では、肺がんによる死者が2001年から2010年にかけて56%増加したとフォーブス誌が伝えている。同誌はまた、マサチューセッツ工科大学研究チームによる、大気汚染が主な原因で、中国北部の住人は南部に比べ寿命が5.5年短いという研究結果も伝えている
こうした深刻な状況に対し、中国中央テレビ局(CCTV)と、人民日報傘下のグローバル・タイムズ紙が、大気汚染には「意外なメリット」があると報道。敵国の誘導ミサイルの使用を妨げるなど、軍事的にプラスの面があるかもしれない、などと指摘した。記事は既にネットから削除されたが、読者の批判を招いたとフォーリン・ポリシーは伝えている。
【石炭から原子力やクリーンエネルギーへ 政府の対策】
16日、国際エネルギー機関(IEA)は2013年中期石炭市場調査を発表した。報告では、今後5年間で世界の石炭需要は年平均2.3%増加すると予想。同期間、中国の石炭需要は年平均2.6%増えると予想されている。
中国では引き続き旺盛な石炭需要が予想され、世界の需要増加分の約60%を占めると報じられている。ただし、エネルギーの多様化政策などにより、増加ペースは抑制されるとインターナショナル・ビジネス・タイムズは伝えている。
AP通信によると、中国国務院と内閣による計画では、原子力、天然ガス、再生可能エネルギーの割合を増やし、2017年までにエネルギー使用に於ける石炭の割合を65%まで削減する意向だという。原子力発電は中国の電力供給の1%を占めるのみだが、現在30の原子力発電所が建設中であり、数十が計画中であるとフォーリン・ポリシーは報じている。
中国国内のシェールガス(埋蔵量は世界最多とも)にも言及されているが、アメリカの2倍の深さ、抽出に必要な大量の水の供給が難しいことから、実現化は厳しいとインターナショナル・ビジネス・タイムズは指摘している。