メキシコのエネルギー開発、ついに開放 参入ねらう日本、中国、インド
メキシコ下院は12日、歴史的なエネルギー改革法案を可決した。75年間にわたる国営石油企業ペメックスによる独占が終わり、エネルギー部門へ海外から多額の投資を呼びこむねらいだ。法案は、憲法の条項を修正するために州議会の承認を得る必要があるが、形式的なものとみられている。エンリケ・ぺニャ・ニエト大統領は、来年2月初めまでに法案に署名する見込みだ。
メキシコはアメリカに原油を輸出している。2004年は1日150万バレルだったが、現在その量は減少し2013年には1日40万バレルまで落ち込んだ。同国は今では、アメリカから天然ガスを輸入しなければならなくなっている。
メキシコには未開発の海底に膨大な量の資源が眠っていると考えられている。エネルギー改革では、これら石油・ガスの資源開発や生産、インフラ整備、発電など、エネルギー産業全体にわたって、海外からの投資を認めるとしている。
【参入の機会を窺うアジア企業】
中国国営企業を筆頭に、アジアの企業はこれまでも、自国のエネルギー需要増加に応えるため、アメリカ大陸に巨額の投資をしている、とウォール・ストリート・ジャーナル紙が報じている。インド石油天然ガス公社(ONGC)ビデシュのD.K. サラーフ 取締役は、「当社は、メキシコの海上とその他の場所の資源採掘権購入と、同国への技術協力というふたつの側面を考えている」「今後の開発を注視していくつもりだ」と述べた。
同紙によると、三井物産は既に、太平洋岸で採掘されたガスを運び込むターミナル操業の準備を始めているようだ。広報担当者によると、同社は4月には、ペメックスと共同事業の覚書に署名したという。「良い開発であれば」と将来の投資についても検討しているようだ。
中国の習近平国家主席は6月、メキシコを訪問した。習氏とメキシコのエンリケ・ぺニャ・ニエト大統領は両国間のいくつかの貿易協定に署名し、中国はメキシコ石油産業への投資のため道ならしをしたとみられている。
【アメリカ市場の競争激化に危機感を抱くカナダ】
メキシコは政治的環境が比較的安定し、アメリカに近いため、アメリカの投資家には魅力だ、とウォール・ストリート・ジャーナル紙が報じている。また、カナダのグローブ・アンド・メール紙は、メキシコのエネルギー改革は、アメリカ市場においてカナダの同産業にとって脅威となるとみている。
専門家は、メキシコ政府の改革が実際どこまですすむか、そして地理的戦略をどうするかによるとして、今後のメキシコ政府の動向に注目している。