インド最高裁「同性愛は違法」 しかし「第三の性」は認められる複雑な社会背景とは

 インドの最高裁判所は11日、同性愛を違法とする判決を下した。

 2009年、ニューデリー高等裁判所は「同性愛行為は合法」との判断を示していた。これに対し、最高裁は「憲法的に支持できない」とし、同性愛行為は最高10年の禁固刑に処するとした。また、同性愛行為を認めるかどうかは議会が決めることだと述べた。

 国連人権理事会のアナンド・グローバー弁護士は、「私たちの戦いは終わっていない」と述べ、判決見直しを求めていく姿勢を示した。

【植民地時代の153年前の法律の復権に、ゲイ権利活動家らは落胆】
 インドではイギリス植民地時代からの刑法第377条によって「自然の秩序に反する性的行為」が禁じられ、同性愛行為は犯罪とされてきた。

 今回、最高裁も2009年の画期的な高裁判決を支持するとみていたゲイ権利活動家はショックを受け、激怒した。超保守的なインド社会では差別や警察の嫌がらせがあるという。

 フィナンシャル・タイムズ紙は、活動家は法廷闘争を続けると誓ったものの、議会が総選挙の数ヶ月前に植民地時代の法律をくつがえす見込みはほとんどないとみていると報じた。

【同性愛行為を認可するかどうかを決めるのは議会か、裁判所か?】
 議会主導のインド政府の立場はあいまいだ。エイズ予防プログラムを推進する保健省は同性愛団体を支持。保守的な内務省は、同性愛行為は社会秩序を脅かすと主張する。

 インドの追加法務次官インディラ・ジャイシン氏は「基本的人権の問題において、最後の解釈者は裁判所」と語り、「最高裁の義務の放棄」と批判。カピル・シバル大臣は「法がどうあるべきかの最終決定者は議会」との見解を示している。

 一方でインド政府はトランス・ジェンダー(ヒジュラ)を認め始めている。2010年には国勢調査の性別欄に、男性・女性に加え「第三の性」の選択肢が加わった。

 ガーディアン紙は、最高裁は政治家に社会の隅のコミュニティーの権利を尊重するよう命令するなど、進歩的な判決で知られていることを伝えた。また、野党のインド人民党、ヒンズー国民党の勢力が増すなどインド社会は急速に変化しているが、深く保守的なままだと論じた。

【アメリカ政府は懸念を示すも、権利団体は賛否両論】
 アメリカ国務省のジェン・サキ報道官は、「成人同性間の同意に基づく性行為を犯罪化するすべての行動に反対する」と懸念を示した。

 アメリカ最大の人権団体ヒューマン・ライツ・キャンペーンは、今回の判決について「不穏な後退」と表明。一方、保守的な法的権利擁護団体アライアンス・デフェンディング・フリーダムの主任顧問ベンジャミン・ブル氏は、「インドの最高裁は、活動家の利益より健全な社会の利益において判決を下した」と歓迎したとCBCは報じた。

Text by NewSphere 編集部