政治は混乱、経済は好調? 米GDP年率2.8%増のからくりとは

 米商務省は7日、7-9月(第3四半期)の実質国内総生産(GDP、季節調整済み、年率)速報値を、前期比2.8%増と発表した。前期の2.5%増から拡大し、年間で最大の伸び率となった。

 在庫投資や住宅投資、地方・州政府の投資が伸びたことが主な原因。ただ、GDPの約7割を占める個人消費は1.5%増で、前期の1.8%増から伸び幅が縮小した。

 7-9月期 GDPの公表は先月30日の予定だったが、政府機関の一部閉鎖の影響で延期されていた。

 8日には米労働省が10月の雇用統計を発表する。

【予想以上に高いGDP値に反し、家計支出の伸びは鈍化】
 今回、米商務省が発表した「GDP2.8%増」という数値は、エコノミスト予想中央値の2%を上回る。

 しかし「見出しは見せかけで、詳細は改善していない」というパンテオン・マクロエコノミクスのチーフエコノミスト、イアン・シェファードソン氏の見解をフィナンシャル・タイムズ紙は掲載した。

 全体の成長率が伸びたのは、あくまで在庫が大きく増加したためであり、在庫変動を除いた数値は、前期の2.1%増に対し、2%増にとどまっている。これは家計支出の伸びの鈍化を意味している。

 ウォール・ストリート・ジャーナル紙も、政府閉鎖や債務上限の問題を考慮に入れれば、年内に成長は見込めないとのエコノミストの見解を掲載している。

【米労働省の10月雇用統計はどうなる?】
 10月の米雇用統計については、政府閉鎖による影響で予想は困難だとフィナンシャル・タイムズ紙は報じた。その上で、雇用者数は10万人増、失業率は9月の7.2%から7.3%へ増加すると予想した。

 一方ブルームバーグは、雇用者数は12万人増となると予想した。

【アジアへの影響:東京は円高・株安の動きに】
 今回の米GDP発表による影響で、アジア株式市場は8日、4週間ぶりの低水準に下落。TOPIX(東証株価指数)は、前日比0.6%安となった。

 10月の米雇用統計の発表を控え、投資家が買い見送り姿勢となり、前日の米国株が利益確定売りで下げたことが原因とみられる。

Text by NewSphere 編集部