米国、シリア攻撃見送る可能性も? 今後のリスクとは
オバマ米大統領は9日、シリアのアサド政権がロシアの提案に従って化学兵器の引き渡しに応じた場合、シリアへの軍事介入を見送る、と述べた。ロシアのラブロフ外相はアサド政権に対し、化学兵器を国際監視下に引き渡すだけでなく、廃棄するよう提案したという。対して、シリアのムアレム外相は、「シリアはその構想を喜んで受け入れる」と記者団に話した。ただし、実行に踏み切るかについては言及しなかった事をフィナンシャル・タイムズ紙は伝えている。
【各国の反応は?】
欧米の外交筋は、交渉長期化につながる今回の事態は、アメリカの軍事行動を遅らせる為のアサド政権の戦略ではないかと懸念している、とフィナンシャル・タイムズ紙は伝えている。
キャメロン英首相は、「気をそらす為の戦略ではなく本当の申し入れであるなら、真摯に検討したい」とコメント。国連の潘基文事務総長は、国連安保理へのシリアの化学兵器破壊提案の要請を示唆している。
また、アメリカの軍事介入に同意しているフランスは、ロシアの提案を綿密に検討する価値があるとした上で、(1) 早急な化学兵器の国際監視下への引き渡しと廃棄 (2) シリアが応じない場合、国連安保理に基づいた対応(3) 8月の化学兵器使用に関する責任をICCでの追訴、という3条件を提示していると同紙は伝えている。
【軍事介入のリスクと意義】
オバマ大統領は10日、シリアへの軍事介入に関してテレビ演説を行う。化学兵器の保有や使用が国際社会で許されれば、アメリカの安全も危ぶまれる可能性を挙げるとみられる。
シリア問題は既に、アメリカの財政と大統領生命を危ういものにしており、最大のリスクは対シリア戦略そのものにある、と海外各紙は分析している。
ウォール・ストリート・ジャーナル紙は、アメリカが軍事介入を実行しなかった場合、イスラエルやエジプトに対するアメリカの影響力が弱まり、イランへの核施設への攻撃に繋がる可能性もある、といった見解を伝えている。