フィリピン怒りの抗議 中国、領土紛争中の南シナ海にブロック設置

 フィリピン国防省は3日、中国が、領土紛争中である南シナ海のスカボロー礁にコンクリートブロックを設置したと明らかにした。中国が実効支配に着手し始めたと非難した。

 フィリピン国防省トップは、「建造物を構築する前兆だ」として、「南シナ海行動宣言」に違反していると中国を糾弾した。この宣言は、南シナ海問題の平和的解決を目指し、2002年にASEAN9ヶ国と中国間で調印されたものだ。法的な拘束力を持たないが、中国は対立国が新たな行動を起こした場合に、「南シナ海行動宣言に違反」と相手国を非難してきた。なお、今月中に法的拘束力のある行動規範の協議に着手することに関係国が合意していた。

 中国の李首相は3日、地域の安定に影響を与える「かく乱要因」であったことを認めつつも、南シナ海の島々の領有権を巡る問題について、「中国としては、南シナ海の議論は中国とASEANの間の問題ではなく、協力の大事業に影響を及ぼすべきではないと認識している」と発言したことが報じられている。

【フィリピン対中国 スカボロー礁めぐり応酬が激化】
 フィリピンは1月、南シナ海の領土問題で中国を国際仲裁裁判所に提訴していた。中国は裁判を拒否しているが、審理は進行中だ。

 この件は、「直接交渉を行う」という中国の姿勢に反し、中国を激怒させたとフィナンシャル・タイムズ紙は指摘している。

 その報復か、今月3日から中国の広西チワン族自治区で開かれている中国とASEANのエキスポに、招待されていたアキノ比大統領の訪問を見送るよう中国側から申し入れがあり、同大統領は出席していない。

 中国は、フィリピンにエキスポ出席を認める条件に国際仲裁裁判を取り下げるよう要求していたと関係筋が明らかにした。

【フィリピン、「再び」悪夢か】
 中国は1994年、フィリピンの排他的経済水域にあるミスチーフ礁に、今回と同じような手法で建造物を設置し、実効支配を確立している。そのため、今回の件についてフィリピン当局は強い懸念を示している。しかしながら、自国だけで解決する能力はいまのところないとフィリピン国防省は述べている。

 ブルームバーグは、フィリピンがアメリカに対し、スカボロー礁近くのサンバレス州にある軍用基地へのアクセス権を与える可能性がある、という国防省トップの発言を報じている。

 ヘーゲル米国防長官は、フィリピンにおける米軍の駐留強化を求めていたとウォール・ストリート・ジャーナル紙は報じており、フィリピンと米国の利害関係が一致する形になりそうだ。

Text by NewSphere 編集部