エジプト、軍事政権へ回帰か? カギを握る米国の動きとは
エジプトで25日、モルシ前大統領の出身母体・ムスリム同胞団の精神的指導者ムハンマド・バディヤ氏と、ハイライト・シャーテル、ラシャード・バユーミ両副団長の裁判が開かれた。3人は、6月30日に、モルシ前大統領に抗議するデモ隊のうち、少なくとも8人を殺害した罪に問われている。しかし、暫定政府側が治安上の理由で彼らを裁判所に連行することができなかったことを理由に、裁判は被告人不在で10月29日に延期となった。
また同日、現在軟禁中のホスニー・ムバラク元大統領の裁判も開かれた。同氏は、2011年の18日間に及ぶ革命において、約900人のデモ参加者を殺害した罪で、2012年に終身刑を言い渡されていた。しかし、その後控訴が認められ、再審に及んだ。
【軍事政権回帰への不安】
先月、合法的選挙で選ばれたモルシ氏が軍により追放された。一方ムバラク氏は、大罪に問われながらも釈放が認められている。これらは、エジプト国政が、2011年の革命前に逆戻りする可能性を示す、象徴的な出来事だとフィナンシャル・タイムズ紙が報じている。
これに対し暫定政府のハゼム・アル=バブラウイ首相は24日、ムバラク氏の釈放は、旧政治体制に戻るものではないと説明したという。
また25日の裁判では、裁判官がその過程の透明性を非常に高いものにし、証拠として使われた資料は公開されることを約束した、とアルジャジーラが報じている。
一方、民主主義の活動家たちは、モルシ前大統領支持者を鎮圧するために暫定政府が行った、緊急措置法の制定を、危険な動きだとしている。これは軍の権限を強化するもので、2011年からの自由主義が危うくなっていると警告している。
【両派から非難を受ける米国】
エジプトでは、米国とムスリム同胞団がエジプトを破壊しようとしている、との噂が広まっているようだ。ニューヨーク・タイムズ紙によると、イスラエル支持の姿勢などから、米国を敵視する傾向はこれまでも根強かったという。しかし現在の米国への不信感は、国内メディアによって暗に炊きつけられたものだ、と同紙は指摘している。
米国はエジプトに毎年15億ドルの援助を行ってきた。同胞団そのものへの援助はない。実際オバマ政権は、エジプト軍が同胞団支持者1100人以上を殺害した後も、同国軍への援助をやめないことで強い批判を受けている。米国はエジプト暫定政府への制裁として、エジプト軍との合同演習を中止するだけにとどまっている。