1300人犠牲か シリア政権の化学兵器使用疑惑に、世界の対応は?
反体制派統一組織・シリア国民連合は21日、シリア政府軍による毒ガス攻撃で計1300人が死亡したと発表した。
政府軍は「全く根拠がない」とし、化学兵器の使用を強く否定した。
ロシア外務省のルカシェヴィチ報道官は、反体制派による挑発の可能性を示唆。反体制派は国連の支持を得るとともに、ジュネーブで開催予定のシリア和平会議を阻止するために政権に責任をなすりつけたと非難した。
国連安全保障理事会は21日、非公開の緊急会合を開き、「迅速な調査」と「停戦」を呼びかけたが、それ以上の行動は控えた。議長国アルゼンチンのペルセバル大使は、「化学兵器の使用は国際法に違反するとの立場で一致した」との見解を示したものの、アサド政権を擁護するロシアと中国が調査の呼びかけに反対したようだと報じられている。
海外各紙は、反体制派の主張の信ぴょう性と、西側諸国の今後の対応に注目した。
【反体制派によるねつ造か?】
反体制派と政府軍は、互いに、相手側が化学兵器を使用していると主張しており、国連調査団が19日から現地調査を始めたところだった。
政府軍は「シリアに対する一部の国による汚れたメディア戦争だ」との見解を示し、国営テレビも「シリア入りしている国連調査団の活動を妨害するため、情報がねつ造された」と報じた。
これに対し米国当局は、「明らかに政府による化学兵器攻撃だった強い兆候がある」と反論した。
国連のエリアソン副事務総長は「結論がどうであれ、これは深刻な人道上の問題の高まりをあらわす」と述べた。
インターネット上には活動家により、外傷を受けた跡のない遺体やけいれんで苦しむ人々の姿が映っている動画が多数投稿された。ただし、動画がいつ、どこで撮影されたかは確認できず、これらの動画では化学兵器の使用は証明できないとする専門家も多いという。
化学兵器専門家のラルフ・トラップ氏は「国連チームがシリアにいるので、非常に効果的な調査ができるだろう」とアルジャジーラに語った。
しかし、国連調査団はシリア政府が事前に指定した3ヶ所にしか訪問できないため、今回の疑惑について調査できるかは不明だとニューヨーク・タイムズ紙は報じた。また、政府が記者の活動を禁じ、反体制派が外への情報を監視しているシリアでは、真実はとらえどころがないとも論じている。
【西側諸国の対応は?】
米国政府は6月に、アサド政権が化学兵器を使用した決定的な証拠があると結論付け、反体制派への支援を拡大することを決定していた。また、オバマ大統領が、シリア政権の大量破壊兵器の使用が、米国の軍事介入への「レッドライン(越えてはならない一線)」となると明言して以来、ちょうど1年たつ。
ウォール・ストリート・ジャーナル紙は、ブッシュ政権下で国家安全保障担当副補佐官を務めたエリオット・エイブラムズ氏の見解を報じた。同氏は、今回の疑惑は重要なターニングポイントになると指摘。もし西側諸侯が対応できなければ、対立はますます悪化するとし、米国の介入の必要性を示唆している。
ニューヨーク・タイムズ紙によると、シリア国民連合軍事部門のメディア・コーディネーターは、今回の攻撃でアサド政権が「レッドライン」を気にしていないことがわかったとして、「国際社会が今行動しなければ、いつ行動するのか?」と、支援を強く求めている。