エジプト政府の弾圧激化 解決のカギは米国か?
エジプトでは、暫定政府と、モルシ前大統領の支持母体ムスリム同胞団との衝突が収束に向かう様子が全く見られないようだ。
軍最高評議会議長シシ氏によって設置された暫定政府が7月31日、座り込みを続けていた前大統領支持者たちへの対応の権限を警察に委譲して以来、流血の事態が続いている。
これまでにムスリム同胞団は約1000人、警察は40人以上の死者が出ていると報道されている。
【次々と拘束される同胞団幹部】
同胞団の精神的指導者ムハンマド・バディヤ氏(70歳)は13日、カイロの北東に位置するナスルシティーのアパートから拘束された。
また、バディヤ氏の有力な腹心であるハイラト・シャーテル氏も拘束中で、8月の後半に6月の同胞団に抗議した8人の殺害を指揮した罪で裁判にかけられる予定だ、とアルジャジーラが報じている。
このほかにも、多くの同胞団幹部がモルシ氏追放後、拘束されているようだ。
【政府が扇動する報道弾圧】
流血を招いている強硬な取り締まりに対する国際的な非難の中、暫定政府は、暴力行為を非難する海外メディアの一斉弾圧に乗り出した、とニューヨーク・タイムズ紙が報じている。
なお軍は既に、モルシ氏を追放した直後、同氏を支持する国内のテレビ局を全て閉鎖していた。このような動きは、国内そして民間メディアにも急速に拡大し、シシ氏の支持者が、少なくとも12人の外国人記者を襲撃したり、拘束したりしたという。
暫定政府とそれに同調する国内メディアは、西側メディアが、警察との衝突によるモルシ氏支持者の死亡人数の多さにばかり焦点をあて、彼らによる暴力行為に十分な注意が向けられていないと、不満を表しているようだ。
政府は記者会見で、エジプトは、西側メディアが「同胞団に対する偏向した」報道をしていることについて非常に遺憾だとしている。
【シリアの二の舞にならないために】
ワシントン・ポスト紙は、エジプトが、激しい内戦で国が荒廃しているシリアと同じ道を辿っていると警告している。
今のエジプトでは、シリアがそうであったように、イスラム主義者をテロリストと呼び、証拠もないのに指導者を拘束、平和主義を放棄し、政府に批判的な国内メディアは沈黙させられ、外国人記者が襲われていると、厳しい現状を伝えている。このままでは、シリアのように、内戦が大量の難民を生み、新しいアルカイダの拠点になってしまうと警告した。
同時に、同紙はその解決策も提示している。
エジプトはシリアよりも外国からの圧力に非常に弱いという。米国の軍事援助に頼っているという以外にも、経済活動を観光や海外からの投資に負っているからだという。
このため、西側が一致団結して、同胞団への暴力行為をやめるよう求め、独裁政権は受け入れられないとの立場をはっきりさせるべきだ、と主張している。