最高速度は新幹線の2倍 テスラのイーロン・マスクCEOが構想する、夢の乗り物「ハイパーループ」とは?
米電気自動車メーカーのテスラ・モータースや宇宙開発企業スペースXの創業者、イーロン・マスク氏は12日、新たな交通システム「ハイパーループ」の構想を発表した。
ハイパーループは、低圧力の筒の中を、「ポッド」という乗り物が、太陽光発電による電力を使い、空気をクッションにして浮いて進む。サンフランシスコからロサンゼルスまで、約30分で乗客を運ぶという。最高速度は時速1220kmにおよび、日本の新幹線の最高速度(時速約580km)を2倍以上上回る。
マスク氏は、ハイパーループを、2008年に建設計画が承認された、ロサンゼルスとサンフランシスコ間を結ぶ「カリフォルニア高速鉄道建設計画」の代替案として提案した。
同氏の発表への期待と好奇心は、テスラ・モータースの株価を大きく引き上げていた。
発表された構想の内容と問題点を、海外各紙が報じている。
【ハイパーループの利点】
既存の計画であるカリフォルニア高速鉄道は、予算が700億ドルと見積もられている。
これに対しマスク氏は、ハイパーループは60億ドルの予算で建設可能だとしている。「鉄道は、遅く、運営費用が高くつき、飛行機よりもふた桁以上も安全性が低い。そんな乗り物を誰が使うというのか?」と発言した、とフィナンシャル・タイムズ紙が報じている。また、片道20ドルの料金設定が可能だともしている。
空気圧を利用した乗り物は、技術的には実現可能だろうと考えられてきたが、実際作ることの困難さと、乗り物を通すトンネルを地中に掘るための費用、その土地購入が高額になるため、有効な意見としていままで取り上げられることはなかった。
これに比べ、ハイパーループは、地中ではなくカリフォルニア中央を走る高速道路に沿って地上の支柱の上に建設する計画だ。このため広大な土地を必要としない。また、太陽光発電により電力をまかなえるという。
【建設は実現されるのか?】
大きな関心を集めた野心的な計画だが、多くの専門家は、構想は技術的に脆弱で、出資者もいまのところいないと指摘している。ニューヨーク・タイムズ紙は「60億ドルの予算で、どうやってこれを実行できるんだ?」という専門家のコメントを取り上げている。
マスク氏自身も、建設は他人に任せたい、と計画実行の先頭に立つ意志がなく、ハイパーループの計画を始めたこと自体を後悔している、とテッククランチが報じている。同氏は、計画について「言わなければよかったと思う」「スペースXとテスラの経営もあるし、とにかくでたらめに忙しいんだ」と発言した。
ハイパーループの建設は非常な困難が予想され、マスク氏が直接的に計画をすすめる気がないということから、結局は、この計画が空想にとどまることになるだろうと同メディアは報じている。
なおマスク氏は、ハイパーループの構想について、営利目的の起業家や政府関連の団体以外の人々と共同開発のため広く公開し、さらなる妙案を募るとしている。