中国の鳥インフルエンザ 専門家はヒト間感染を懸念

 中国南部・広東省の衛生当局は10日、同省初のH7N9型鳥インフルエンザウイルスの感染者を確認したと発表した。

 感染者は地元の市場で家きんの食肉処理を担当していた51歳の女性。発熱の症状で今月3日に入院したが、重体だという。

 中国では今年3月に最初のH7N9型ウイルス感染者が報告され、これまでに134人が感染し、44人が死亡している。

 中国では5月下旬にH7N9型鳥インフルエンザの流行緊急対応を終了していた。国民健康家族計画委員会の広報は8日、「状況を見守っており、秋冬に起こり得る流行に備えている」と語った。

 海外各紙は、同ウイルスのヒト間での感染拡大を懸念している。

【ヒト間感染の可能性は?】
 今回の感染者に密接に関わった人は約100人とされており、そのうちH7N9型ウイルスに感染した人はいないという。

 広東省保健局の副局長は、「広東省はまだH7N9型のヒト感染のリスクに直面しており、ヒト間感染の可能性は消えていない」とコメントしていることを中国国営新華社通信は伝えている。

 一方、「温暖な気候が感染を阻止した可能性があるが、涼しくなれば症例があらわれる」とのウイルス学者の見解をウォール・ストリート・ジャーナル紙は掲載した。

【H7N9型鳥インフルの親子感染の事例】
 江蘇(こうそ)省疾病予防管理センターの研究者は6日、英医学雑誌(BMJ)のウェブサイトに、中国でH7N9型ウイルスのヒト間感染とみられる事例が初めて確認されたとの論文を発表した。

 論文によると、江蘇省の60歳の男性からその娘への感染を確認したという。2人はその後死亡している。

 同研究者は、直接感染の可能性を示す証拠が得られたとしつつ、ウイルスの感染力は「限定的で、持続可能ではない」としている。

 世界保健機関(WHO)は、「(H7N9型は)既知の鳥インフルより(ヒト間)感染の可能性が高い」と警告していた。

【パンデミックの懸念は?】
 フィナンシャル・タイムズ紙は、ベトナムにあるオックスフォード大学・臨床研究所でH5N1型鳥インフルやSARS(重症急性呼吸器症候群)などの感染症に長年かかわってきたジェレミー・ファーラー博士のオピニオンを掲載した。

 この中で同氏は「少数のウイルスは世界的流行に発展する可能性がある」と警告。その上で、ヒト間感染を引き起こす本当に危険なウイルスの兆候を知るには、「機能獲得型」インフルエンザの研究が重要だと主張した。

 ただ、この種の研究にはバイオテロのリスクも議論されているため、セキュリティ強化も重要となる。

Text by NewSphere 編集部