エジプト政府警察に権限委譲 大規模な流血惨事を招く不安
エジプト暫定政府は31日、抗議行動を続けるモルシ前大統領の支持者たちを解散させるため、警察に「あらゆる必要な手段」を講じる権限を与える、という声明を発表した。
声明は、支持者による「テロ行為」や道路封鎖が起きており、もはや容認できないものだ、としている。
モルシ氏は、2011年のムバラク政権崩壊後、民主的選挙で選ばれた初の大統領であったが、イスラム主義に傾いた政策が国民の反発を受け、軍部により追放・拘束されているという。モルシ氏の支持者は、同氏が政権の座に戻るまで抗議行動を続けると、対立する姿勢を強めている。
また、検察当局は同日、6月30日から7月1日にかけて、カイロで少なくとも8人の殺害を指示した、ムスリム同胞団の幹部3人を裁判にかけると発表した。
これにより、国内外でさらなる不安が広がる様子を、海外各紙が報じている。
【モルシ氏支持者は徹底抗議の構え】
モルシ氏の出身母体であるムスリム同胞団の指導者は、「平和的な抗議行動を続ける」とし、「我々は自身の見解と信念を放棄することはないし、決して暴力に及ぶことはない。」と述べた。
しかし実際には、抗議者たちの一部は武装をしているようだ。反モルシ派は、武装した支持者たちにより殺人が行なわれたと訴えた、とウォール・ストリート・ジャーナル紙が報じている。
アルジャジーラによると、支持者たちは今回の声明に全くひるむ様子はなく、それどころか、デモの中心地であるカイロのラバ・アルアダウィヤに続々と集結しているようだ。
【遠のく民主主義】
米国は声明に対し、平和的な集会の権利を尊重するよう、慎重な対応を強く求める姿勢だ。
人権活動団体からも、「声明は、エジプト警察に過度で不正な武力行使の権限を与え、さらなる虐待を認めるものだ」と懸念の声が挙がっている。
政府は、抗議者の座り込みを解散させるために、暴力を用いることはないと発言している。平和的な手段によって、抗議者たちが納得できるよう十分な時間をかけ、徐々に進められると説明し、抗議者が逮捕されることはないとまで保証している。
しかし7月には、警察の取締りによって、120人以上のムスリム同胞団支持者が死亡しているとの情報もある。