韓国、また日本企業に賠償命令 戦時中の強制労働で

 戦時中に広島で強制労働させられ被爆したとして、韓国人5人が三菱重工業に損害賠償を求めた訴訟の差し戻し控訴審で、韓国の釜山高裁は30日、1人当たり8000万ウォン(約700万円)の賠償を命じた。

 三菱重工は「判決は不当で、まことに遺憾」とし、上告する意向を示した。

 原告は当初、1997年に日本で訴訟を起こしたが、日本の高裁は「日韓請求権協定で解決済み」として2005年に棄却。その後、韓国の地裁も同様の判決を下した。しかし昨年5月、韓国の最高裁が「日本の判決は韓国の憲法と国際法規範に反する」として差し戻していた。

 なお現在、原告の韓国人5人は死亡しており、遺族が訴訟を継承している。

 海外各紙は、既に緊張が続く日韓関係のさらなる悪化を懸念した。

【日本企業の資産差し押さえの可能性も・・・】
 韓国の裁判所が日本企業に対し元徴用工への賠償を命じたのは、10日にソウル高裁が新日鉄住金(旧新日本製鉄)に出した判決に続き2例目となる。

 韓国の最高裁がこれらの判決を認め、日本企業が賠償を拒否すれば、原告らは日本企業の韓国内の資産の差し押さえを請求できる。そうなれば外交論争に発展するのは確実だとニューヨーク・タイムズ紙は報じた。

 また、これらの判決により同様の訴訟が増えるとの指摘もある。同紙によると、戦時中に強制労働させられた韓国人は少なくとも120万人にのぼるという。強制労働へ関与した現存する日本企業は300社あるとも指摘している。

 日本政府は「日韓請求権協定で個人への賠償問題は解決済み」との立場を維持。韓国外務省は「訴訟の動向を注視する」との見解を示した。

【日韓関係悪化の背景】
 近年、日韓関係は竹島の領有権や従軍慰安婦の問題をめぐり悪化している。先週ソウルで行われたサッカーの東アジア・カップ男子日韓戦では、韓国サポーターが「歴史を忘れた民族に未来はない」と書かれた横断幕を掲げた。これは試合で政治的な主張することを禁じたFIFAの規定に違反する可能性がある。

 今回の判決により、両国の緊張がさらに高まることを懸念する声もある。

 一方ブルームバーグは、とはいえ、アジア2位・4位の経済大国である日韓は、中国の勢いが弱まる中、貿易と成長を維持するという利益は共通しているはずだと報じている。

Text by NewSphere 編集部