電通の6.4倍(売上高総利益)・・・合併で世界一の広告企業が誕生

 世界広告2位の米オムニコム・グループと3位の仏ピュブリシス・グループは28日、合併を発表した。

 新会社名は「ピュブリシス・オムニコム・グループ」で、合併は対等で行うという。新持ち株会社の本社はオランダに置き、執行本部は引き続きパリとニューヨークに構える。

 広告会社の規模を国際比較する際に使われる売上高総利益(2012年)を合算すると、226億ドル(約2兆2200億円)となり、首位の英WPPを抜いて世界トップの広告会社が誕生する。なお世界5位の電通の売上総利益(2013年3月期)は3459.4億円のため、「ピュブリシス・オムニコム・グループ」はその約6.4倍となる。

 合併後、当面はオムニコムのジョン・レンCEOとピュブリシスのモーリス・レビーCEOが共同CEOを務める。30カ月後にレビー氏が非常勤会長となり、レン氏がCEOに就任する。人員削減の計画はないという。

 共同CEOはパリでの記者会見で、「合併した会社を共に率い、我々の社員がクライアントや株主のために一丸となって達成することを楽しみにしている」と語った。

【ネット時代の業界再構築が加速】
 デジタルメディアの台頭で広告業界の事業環境は大きく変化している。もはや伝統的な印刷メディアは消え去り、インターネットやモバイル広告などが主流だ。さらに中国や南米、インドなど新興市場での広告も増加している。そんな中、今回の合併を機に業界再編に拍車がかかるだろうとテッククランチは報じた。

 また、今年これまででTV広告はわずか3.5%増、それに対しインターネット広告は26.3%増だと同紙は指摘した。米インタラクティブ広告協会によると、モバイル広告市場は今年83%増となるという。

 近年、既に新時代への対応強化を狙った合併・買収(M&A)が相次いでいるが、今回は幹部らが年を取っており、後継者育成計画を進めているところが大きな違いだとフィナンシャル・タイムズ紙は指摘した。なおレビー氏は71歳、レン氏は60歳だという。

【独占禁止法の問題は?】
 「新会社は米広告事業の40%を占め、英WPPのシェアの2倍となる」とのアナリストの見解をフィナンシャル・タイムズ紙は掲載し、独占禁止の問題は特に米国で懸念されるだろうと報じた。他の大手に米インターパブリックや仏アバスがあるが、規模はぐんと小さくなる。

 合併実現には41~46ヶ国で当局の承認を要するが、レビー氏は記者会見で「規制当局の承認を得ると確信している」と語った。

【競合クライアントの理解は?】
 広告主の理解が得られるかも課題となる。例えばオムニコムは米ペプシコ、ピュブリシスは米コカ・コーラという、競合する広告主をそれぞれ長年抱えている。また、米マクドナルドや米プロクター・アンド・ギャンブル(P&G)など共通の広告主もいる。

 この点についてレビー氏は、移行チームをつくって対応するとし、「我々はM&Aの経験を多く持っているので、我々にとって全く新しいものではない」と語った。

Text by NewSphere 編集部