7万人が犠牲 激化するメキシコの「麻薬戦争」

 メキシコのミチョアカン州で23日、麻薬組織の奇襲攻撃で22人が死亡した。6回の奇襲攻撃により、連邦警察官2人と襲撃者20人が死亡、15人以上の連邦警察官が負傷した。

 この奇襲攻撃は22日、反暴力デモ参加者への攻撃から始まったようだ。このデモは、麻薬組織「テンプル騎士団」や警察の腐敗に対して行われていた。同州を牛耳る「テンプル騎士団」は、あらゆる人をターゲットにしており、広範囲にわたってゆすりや誘拐、殺人を起こしているとウォール・ストリート・ジャーナル紙は報じている。

 政府は、先週、麻薬組織「セタス」の首領を逮捕したことへの報復ではと考えているようだ。

 なお同州は、マリファナ、ヘロインなどの輸送に重要な地域である。

【政府は対策に苦慮】
 ミチョアカン州には、5月から、「テンプル騎士団」対策と治安回復のため、軍や警察が大規模に配置されている。

 2006年にも、麻薬組織撲滅に向けて同様の措置がとられたが、目的は達成されなかった。専門家は、今回もその可能性が高いと分析している。

 テンプル騎士団は、事実上「法律」であって、同州を浸食し続けているとニューヨーク・タイムズ紙は報じている。

 政府は治安回復を常に主張しているものの、その計画は一度もはっきりと示されていない。

 こうした状況下で、アナリストは、今年初めに就任したペニャ・ニエト大統領が「試されている」とみている。麻薬組織は、新政権が何をやろうとしているのか、それとも何もしないのかを見極めようとしているのでは、とウォール・ストリート・ジャーナル紙は指摘している。

 ペニャ・ニエト大統領はこれまで、麻薬関連の発言は抑制的で、経済対策に焦点を置く姿勢を示している。

【ニュージェネレーションは敵か味方か?】
 自警団の幹部は、ニュージェネレーションと呼ばれる武装グループを危惧している。

 彼らは仮面をかぶり、自警団が使うスローガンがプリントアウトされたシャツを着用していたが、警察本部を占拠し、銃やパトカーを強奪したという。

 ただ、彼らは「テンプル騎士団」などとは異なる組織のようだ。ニューヨーク・タイムズ紙によると、彼らが5月下旬に発表したビデオでは、暴力やゆすりを否定し、麻薬の売買に集中する意向を示していたようだ(ただし当局は、このビデオの出処が確認できなかったと伝えている)。

 メキシコの「麻薬戦争」で死亡した人は、保安部隊や罪のない一般人も含め、70,000人以上にのぼっているという。

Text by NewSphere 編集部